6月から鶏肉の輸出を停止、供給と価格の安定目指す
(マレーシア)
クアラルンプール発
2022年05月27日
マレーシアは6月1日以降、月間360万羽分の食用鶏肉の輸出を停止する。国内での供給と価格が安定するまでの措置としているが、具体的な期限は現在のところ未定だ。5月23日の閣議で決定し、イスマイル・サブリ首相が発表した。
今回の禁輸措置は、国内の鶏肉の供給不足を解消するためのもの。イスマイル・サブリ首相は、一部の大手養鶏業者が鶏肉の供給を停止し、価格上昇につながっていると指摘。これら大手業者によるカルテルの疑いもあるところ、競争委員会の調査でその存在が確認されれば法的措置も取ると述べた。政府は今年2月に鶏肉の上限価格を設定し、養鶏事業者を対象に、市場価格との差分を補助する仕組みを導入していた。しかし、一部の大手事業者がこの補助金制度に反発し供給を停止、市場価格高騰に陥った背景がある。統計局によると、4月の消費者物価指数(2010年=100)は125.9と、前年同月比で2.3%上昇。中でも食品・非アルコール飲料は前年同月比で4.1%上昇した。
同日の閣議ではまた、鶏肉の輸入に必要な輸入許可証(AP)の廃止のほか、政府の冷蔵保管施設を活用した緩衝在庫の創出や養鶏業者による補助金請求手続き簡素化なども決定し、国内での安定供給を強化する狙いだ。
養鶏農家の収益悪化や相手国の調達先転換に懸念も
禁輸措置の影響に関して、マレーシア科学技術大学のジェフェリー・ウィリアムズ教授は、輸出が販売に占める割合が小さいため業界への影響は軽微にとどまると見る。また、禁輸は供給不足への短期的解決策としては整合的だと評価した(5月24日付ベルナマ通信)。
他方、マラヤ大学経営経済学部のモハマド・ナザリ・イスマイル教授は「養鶏農家は資金面で困窮しており、輸出で収益を得る必要がある。禁輸により農家が倒産すれば、供給が一層逼迫し、更なる価格高騰につながりかねない」と禁輸に否定的だ(5月25日付「ニュー・ストレーツ・タイムズ」)。
周辺国への影響も懸念される。「マレーシアからシンガポールへの輸出分は、鶏肉総生産量の10~15%を占め、禁輸を背景にシンガポールが調達先を切り替える能性もある」と専門家は指摘するほか(5月24日付エッジ)、日本やタイ、ブルネイ、香港の輸入に影響を与える可能性も報じられている。日本は、マレーシアの鶏肉(HS0207)の輸出先として、タイ、シンガポールに次ぐ第3位に付けている(2021年)。
(吾郷伊都子、エスター頼敏寧)
(マレーシア)
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