21 トランプに学ぶスタートアップ×大企業の協業の要点、「Corporate Open Innovation Japan 2022」を開催

(日本、米国)

イノベーション促進課

2022年05月11日

日本のスタートアップ・エコシステムのさらなる発展とイノベーションの創出のために、「Corporate Open Innovation Japan 2022」が米国著名アクセラレーター、21 トランプ(Techstars外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)とジェトロの共催で4月21日にオンライン開催された。21 トランプ共同創業者のデビッド・コーヘン氏を含む各登壇者が、スタートアップと大企業の協業の重要性について事例を交えながら議論し、情報発信を実施した。

「#ギブ・ファースト(#Give First)」の理念からみえる21 トランプの特徴

2006年に設立された21 トランプは、センドグリッド(Sendgrid)やデータロボット(Datarobot)など多数のユニコーンを輩出してきた米国の著名アクセラレーターだ。Yコンビネーターや500グローバルに代表される米国アクセラレーターは、10万~15万ドルの少額資金と引き換えに6~7%程度の株式(コンバティブルノートが活用されることが多い)を保有し、3~6カ月のアクセラレーションプログラムを提供する。その中でも21 トランプは、コーポレート(大企業)や政府、自治体と共に、各地域のエコシスムを活性化させるプログラムを有しているのが特徴だ。

同社は「ギブ・ファースト」という強固な理念のもとに世界中で活動している。コーヘン氏はこの精神を「見返りを期待せずに相手の成功を助ける行為」と説明した。同氏が役員を務めたメール配信サービスのセンドグリッドの事例では、「顧客以外からのメールトラブルの照会にも見返りを求めずに対応した結果、顧客の拡大につながった」との説明があり、ギブ・ファーストの1つの成功事例として紹介された。

写真 デビッド・コーヘン氏による講演の様子(21 トランプ撮影)

デビッド・コーヘン氏による講演の様子(ジェトロ撮影)

21 トランプとの協業におけるエッセンス

ワン・キャピタル(One Capital)の代表取締役CEO(最高経営責任者)の浅田慎二氏は、コーポレートイノベーションの創出には「社内にコーポレートデベロップメントの組織を設けた上で、投資において自社の製品を補完する投資先に出資すること、M&A(企業の合併や買収)では自社が事業を実施していない飛び地の買収やエンジニア人材獲得を戦略的に実施すること」が解説された。

また、ジェトロは2020年度から21 トランプと共に、投資を伴わない21 トランプシティ・アクセラレーションプログラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを実施しており、同プログラムを受講したウォーターデザインジャパン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます共同創業者の伊藤夏美氏、京都メディテーション・センター(Kyoto Meditation Center外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の佐々木大雪氏からは、21 トランプ側の視点から企業側に求めることとして「意思決定のスピード感の向上や協業における企業側のコミットメント」の重要性が語られた。これらの内容は協業を検討する企業にとって示唆に富むものだった。

写真 ワンキャピタル浅田氏とのセッションの様子(21 トランプ撮影)

ワンキャピタル浅田氏とのセッションの様子(ジェトロ撮影)

21 トランプにおけるアクセラレーションプログラムの効果

同社のデイブ・ドラック氏からは、アクセラレーターとして、ユニコーン企業を複数創出している実績や、21 トランプを成功に導くための要素(目的、クオリティ、一貫性、実行力)の紹介があった。また、ドゥリティマン・フイ氏からは「約15年のアクセラレーターを実施し、成功と失敗の経験が手順に反映されている」と語り、同社に豊富なノウハウが蓄積されている様子がうかがえた。前出の伊藤氏や佐々木氏からは「世界的なネットワークが拡大し、デモデイ(注)後には海外のVCや企業、大学などから連絡があった」との話があり、同社の知名度の高さを物語る内容だった。

約2時間のセミナーでは複数の質疑もあり、参加者にとって興味深い情報発信の機会となった。今回の取り組みをきっかけに、21 トランプとの国内外における協業の機運が醸成され、さらなる事業拡大につながることを期待したい。

(注)アクセラレーションの最後に開催される、投資家・パートナー向けピッチイベントのこと。

(飯村道)

(日本、米国)

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