ネットゼロ実現のための排出削減計画を発表
(ニュージーランド)
シドニー発
2022年05月20日
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は5月16日、2050年までにネットゼロを実現するための排出削減計画を発表した。同計画は、先に発表した排出予算(Emission Budget)の達成に向けて、温室効果ガス(GHG)排出量を削減するための行動計画となっている。
GHG排出量の削減目標を定めた同国初となる排出予算は、3段階から成っている。第1段階では2022~2025年の間に二酸化炭素(CO2)換算で290メガトン、第2段階では2026~2030年の間に同305メガトン、第3段階では2031~2035年の間に同240メガトンのGHG排出量の削減を目指すとした。
今回の排出削減計画では、主に排出予算の第1段階を達成するための具体策を盛り込んだ。輸送関連では、電気自動車(EV)などの低排出車への買い替え支援に5億6,900万ニュージーランド・ドル(約455億2,000万円、NZドル、1NZドル=約80円)を拠出し、2035年までに軽車両におけるゼロエミッション車の割合を30%に拡大する。また、バスや貨物輸送の脱炭素化を促進し、2035年までに貨物輸送による排出量を35%削減することを目指す。さらに、自転車道や歩道の整備、公共交通機関のアクセス改善に3億5,000万NZドルを拠出するとした。農業関連では、今後4年間で7億1,000万NZドルを拠出して、農業分野における排出削減のための技術開発を支援する新たな機関を設立するほか、バイオマス利用やCO2の吸収を促進するための林業支援などに注力する。その他、産業部門やエネルギー部門の脱炭素化のための脱炭素産業基金(GIDI)に今後4年間で6億5,000万NZドルを追加拠出するほか、エネルギー戦略や水素ロードマップを策定し、企業によるエネルギー効率の改善を支援するとした。
アーダーン首相は、「排出削減計画は、気候変動問題に対処する機会を最大化するだけでなく、雇用の創出、クリーンなエネルギー、インフラの改善などによって経済の安定性をもたらし、高賃金で低排出な経済への移行が実現する」と期待を示した。
(住裕美)
(ニュージーランド)
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