米穀物大手ADM、イート・ジャストと培養肉を共同開発
(米国、イスラエル)
シカゴ発
2022年05月24日
米国の穀物大手アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM、本社:イリノイ州シカゴ)は5月17日、食品メーカーのイート・ジャスト(本社:カリフォルニア州サンフランシスコ)との培養肉(注1)の共同開発に関する契約締結を発表した。ADMの大規模な開発・生産能力を生かし、培養肉の生産コスト削減を図るのが狙いだ。
イート・ジャストは2020年12月、シンガポールの規制当局から培養鶏肉製品の販売を認可され、世界初の培養肉メーカーとなった。ADMのグローバル食品事業部門のプレジデント、レティシア・ゴンサルベス氏は「代替タンパク質市場は急速に成長を続けており、この分野の最先端のさまざまな新技術やパートナーへ投資を続ける」とコメントした。イート・ジャストのジョッシュ・テトリック最高経営責任者(CEO)は「生産コスト、特に培養に必要な栄養素のコストを削減したい」と語った。
培養肉メーカー、生産コスト低下をアピール
培養肉は、植物性代替肉(注2)とは異なり、規制当局の販売認可が必要なほか、高い生産コストが課題とされ、特に後者は「1食当たり100ドル未満に抑えることは困難」ともいわれてきた。これに対し、培養肉メーカーは生産コストの低下をアピールする。イスラエルの培養肉メーカー、フューチャーミートは2021年12月、半年間で同社の培養鶏胸肉1ポンド(約454グラム)当たりの生産コストを約18ドルから約7.7ドルに引き下げたと発表。また、イート・ジャストは、期間限定ではあるが、シンガポールのレストランで1食当たり17ドルで自社製品を提供したほか、2018年からの4年間で生産コストを9割削減したと発表した。テトリックCEOは「ADMとの提携により、今後数年間で従来の肉よりもコストを下げる道筋を見つけたい」と期待感を示しており、今後の行方が注目される。
(注1)実験室で動物のタンパク質細胞を培養して作られる、肉を模した食品(代替肉)。米国では規制当局による培養肉の販売認可が行われていないため、市場には流通していない。
(注2)大豆やエンドウ豆といった植物由来のタンパク質から作られる代替肉。
(小林大祐)
(米国、イスラエル)
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