イングランド銀行が4会合連続で利上げ、13年ぶりに年1%に
(英国)
ロンドン発
2022年05月09日
英国のイングランド銀行(中央銀行)は5月5日、前日の4日に終えた金融政策会合を踏まえ、政策金利を0.25ポイント引き上げて、年1%とすると発表した。利上げは4会合連続で、2009年以来の水準となった。同銀行は、労働市場が逼迫している状況の中、国内の賃金などの企業コストと物価に対する強い(上昇)圧力の兆候が継続して見られていること、およびこれらが持続するリスクを考慮し、追加利上げを決定したとしている。
同行はロシアのウクライナ侵攻を受け、世界的なインフレ圧力が急激に強まっていることから、世界と英国の成長見通しが大きく悪化していると指摘。また、ロシアのウクライナ侵攻と中国の新型コロナウイルス感染拡大により、さらなるサプライチェーンの混乱に対する懸念が高まっているとした。
エネルギーと貿易財の大幅な価格高騰が影響し、3月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、2月の予想を1ポイント上回る前年同月比7%となった(関連ブラック ジャック web)。同行は2022年末にかけてさらに上昇することを見込んでおり、第2四半期には9%強、第4四半期のピーク時には平均で10%強と予想している。4月に英国のガス・電力市場局(Ofgem、エネルギー部門の規制機関)が標準的な家庭のガス・電気使用量に対する年間の価格上限を引き上げており()、10月にはロシアのウクライナ侵攻を踏まえてさらに大幅な引き上げが見込まれていることが、今後のCPIの上昇見通しの背景にある。インフレ率は2023年半ばまでには低下し、2024年には目標の2%に近づくと予想している。
英国商業会議所(BCC)のスレン・ティル経済部長は「金利引き上げは、インフレの原因となっている世界的な逆風と供給制約の解決にはほとんど役に立たない」とし、「金融引き締めを継続するのであれば、消費者および企業が直面する長期的なコスト圧力を緩和し経済活動を幅広く支援するため、財政政策を緩和する必要がある」とした。英国経営者協会(IoD)のキティ・アッシャー・チーフエコノミストは、現在の物価が不安定な環境が事業運営上の不安につながっているとして、「イングランド銀行は、2年後のインフレ率は目標の2%に近づくと予想しており、これはビジネスリーダーにとって歓迎すべきことだ」と先行きの不透明性が軽減されたことを評価した。
(宮口祐貴)
(英国)
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