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(メキシコ)

メキシコ発

2022年04月19日

メキシコ連邦下院は4月17日、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領が2021年10月1日に下院に提出した電力再国有化に向けた憲法改正案(2021年10月4日記事参照)の本会議審議と採決を行った。採決の結果、賛成275票、反対223票で、憲法改正に必要な出席議員数の3分の2の賛成には達せず、改正案は却下された。AMLO大統領が国会に提出した憲法改正案が却下されたのは今回が初めて。

与党・国家再生運動(MORENA)や大統領はここ数日、憲法改正案への反対は国民の意思に背く行為だと野党議員を牽制してきたが(関連ブラック ジャック web)、採決では、野党の中では制度的革命党(PRI)の議員1人だけ賛成票を投じたが、その他は全て反対した。MORENAと連立与党を組むメキシコ緑の環境党(PVEM)の議員団からは、1人が直前に離党して野党・市民運動(MC)に加入して反対票を投じ、1人が離党はしないものの、「イデオロギーよりもメキシコの将来の方が大事」として、将来にわたって環境保護を重視する立場から反対した(4月18日付現地紙「レポルテ・インディゴ」」。

AMLO大統領は否決を受けて、野党議員らの行動はメキシコに対する反逆行為だとし、「民衆や国家の利益を擁護する代わりに、私腹を肥やして(国家から)盗むことに専念する外国企業の擁護者になり下がった」と批判した(2022年4月18日付大統領記者会見録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。他方、日本の経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)は「下院は大きな責任感を持って行動した」と評価し、「民間部門は国民に十分で安価、クリーンな電力をこれからも供給していくことを繰り返し約束する」と発表している(4月18日付CCEプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

リチウム国有化に向けた鉱業法改正案が下院通過

AMLO大統領は4月18日の記者会見で、現政権中には電力再国有化に向けた憲法改正案を再度提出する考えはないことを示した。他方、大統領は17日の憲法改正案採決の直前、リチウム国有化に向けた鉱業法改正案を国会に提出した。憲法改正案の中には、メキシコのエネルギー転換のための戦略的資源として、リチウムの国有化が盛り込まれていたため、憲法改正が実現しなかった場合に備えた立法措置だ。鉱業法改正案は、リチウムの探査や開発、掘削、加工、工業化、販売に従事する国営企業を設立し、上流から下流まで開発を独占させる内容だ。同改正案は18日に与党主導で委員会審議などのプロセスを省略して強制採決にかけられ、MORENA、PVEM、労働党(PT)の議員の賛成多数(298票)で下院を通過した。野党側は十分な審議時間が与えられなかったことに不満を示して議場から退席したため、197票の棄権票が投じられたかたちとなった(4月18日付主要各紙)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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