日系含む30社が利用、植物代替肉開発支援のプロテイン・イノベーション・センター
(シンガポール)
シンガポール発
2022年04月04日
スイスの食品製造機器メーカー、ビューラー(Bühler)の共同イノベーション主任(東南アジア・オセアニア地域担当)を務めるアパルナ・ベンカテッシュ博士は3月28日、ジェトロとのインタビューで、2021年4月からこれまでに、日本や韓国、タイなどの30社が、植物由来の代替肉開発を支援する専門施設「プロテイン・イノベーション・センター(PIC)」(所在地シンガポール)を利用したことを明らかにした。PICは2021年4月26日、食品会社やスタートアップを対象に新たな植物由来の代替肉開発を支援するため、ビューラーとスイスの香料メーカーのジボダンが共同開設した。PICの利用は2022年6月まで、予約で埋まっているという。
ビューラーは本社があるスイスをはじめ、米国、メキシコ、チリ、中国、シンガポールに新規食品などを開発するアプリケーションを設置している。この中でも、シンガポールのPICは、植物由来の代替肉を専門とした開発支援施設だ(2022年2月18日付地域・分析レポート参照)。ビューラーとジボダンは、PICを非営利で運営する。施設内にはビューラーの抽出(Extrusion)加工設備や調理用のキッチンを設置。1時間当たり最大50キロの植物性代替肉を製造可能だ。また、植物性代替肉の大豆、豆、小麦、藻などの原料や香料など、試作品開発に必要な材料や設備が全て備えられ、専門の研究チームも常駐する。
PICの利用料金は、1日当たり1,500~2,500シンガポール・ドル(約13万5,000~22万5,000円、Sドル、1Sドル=約90円)。試作品の製造は通常、3日~1週間で行う。同施設を利用する企業にとっては、加工設備などに多額の資本投資をしなくても、商業生産に向けて試作品を早期に開発できるメリットがある。試作品の知的所有権(IP)については、試作品の開発企業側が100%保有する。
ビューラーは、世界各国で年間800社以上のスタートアップを発掘し、新規商品や新たな製造方式の共同開発の可能性を追求している。同博士は「現在、国際市場で直面している課題はあまりにも多様で、単独で解決できない。ビューラーはこの10年にわたり、産業界や研究機関、スタートアップを含むエコシステムと提携することで、新たなレベルへと到達することができた」と指摘。その上で、「植物性代替肉の商品開発や商業生産でサポートを求めている日系のスタートアップや企業に、ぜひ協力したい」と、日系企業との協業について意欲を示した。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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