2050年のカーボンニュートラル実現に向けたロードマップを発表
(台湾)
中国北アジア課
2022年04月04日
台湾の国家発展委員会は3月30日、「2050年ネットゼロ排出ロードマップ」(以下、ロードマップ)を発表した。台湾当局は2021年4月、2050年までのカーボンニュートラル実現を表明していたが、ロードマップでは、その実現に向けて具体的な道筋・取り組み方針を明示したかたちだ。
ロードマップでは、「4大戦略」と「2大基礎」を柱として、取り組みを推進していく方針を示した。
「4大戦略」とは、エネルギー転換を通じた安全性の向上(注1)、産業転換を通じた産業競争力の強化、持続的な生活への転換、社会の強靭化を指す。特に、エネルギーの安全保障に関しては、2021年には97.4%であるエネルギーの輸入依存度を2050年には50%以下に引き下げるとした。
「2大基礎」とは、カーボンニュートラル実現に向けたベースとなる環境を整えるべく、関連技術の研究開発、実現に向けた関連法制度の整備を指す。
2050年の再生可能エネルギーの割合を60~70%に
台湾の二酸化炭素(CO2)の排出量(2019年)を産業別にみると、電力が1億3,900万トン、産業・建物・商業が合計8,660万トン、輸送が3,500万トン、非燃料の燃焼が2,640万トンとなっている。排出量が最も多い電力分野においては、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合を2050年には60~70%に引き上げる計画だ(注2)。まず、2030年までに、技術が比較的成熟している太陽光および風力発電の導入を進める。導入量は、太陽光は2025年までに合計20GW(ギガワット)、2026~2030年は毎年2GWずつの導入が目標。洋上風力発電については、2025年までに5.6GWを導入し、2026~2030年は毎年1.5GWずつ導入する。2050年までの設備容量の目標値は、太陽光が40~80GW、洋上風力が40~55GWとなっている。再生可能エネルギー以外の電源については、水素エネルギーが9~12%、火力発電については、炭素の回収・貯蔵・再利用(CCUS)技術とセットで行うとし、割合を20~27%とした。なお、電力不足への懸念について、行政院の龔明鑫政務委員は「ロードマップでは、2050年までの年間の電力需要の増加幅を年率1.5~2.5%(注3)と試算している。再生可能エネルギーの導入拡大や、将来より多くの人がグリーンなエネルギーを購入可能になることを考慮すると、電力不足は生じない」と説明した。また、中小企業に対しては、当局が一定割合のグリーンエネルギーを確保、中小企業向けに提供するとともに、企業の脱炭素能力構築に向けた取り組みを支援するとした。
非電力分野の脱炭素化については、産業・運輸・住宅・商業などにおける化石燃料設備の電気化を加速させることに加え、CCUS技術と組み合わせつつ、水素やバイオマスなどの化石燃料に代わる新しいクリーンエネルギーの開発に投資を行う。また、山林や湿地の保護・育成を積極的に行い、炭素吸収源を拡大する(注4)。
台湾当局は、ロードマップの推進により、(1)2030年までの4兆台湾元(約16兆8,000億円、1台湾元=約4.2円)にのぼる民間投資の促進、(2)輸入エネルギーへの依存度の低下(2021年の97.4%から、2050年に50%以下に)、(3)2030年までの大気の汚染量を2019年比で30%減少、などが達成できるとしている。
(注1)ここでの安全性向上とは、エネルギーの輸入依存度を低下させ、国際的なエネルギー市場に対するショックや価格変動が台湾に与える影響を減らすことを指す。
(注2)経済部能源局によれば、台湾の発電量に占める各電源の割合(2021年)は、火力が83.4%、原子力が9.6%、再生可能エネルギーが6.0%、水力が1.1%。
(注3)経済部の林全能常務次長によれば、電力需要の試算は、TSMCなど半導体製造業者の台湾域内での設備拡張や、台湾企業の回帰投資を支援する「投資台湾3大方案」に基づく申請の増加、将来的な輸送機器の電動化も考慮している(「中央社」3月30日)。
(注4)非電力分野で、排出削減が困難な二酸化炭素2,250万トンについては森林などによる自然吸収で相殺をする計画。
(柏瀬あすか)
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