モンゴルで急激な通貨安が進行、実質的な外貨両替規制も
(モンゴル、ロシア)
北京発
2022年04月27日
モンゴルの中央銀行であるモンゴル銀行(BOM)の統計によると、国際収支の赤字拡大により、2022年2月末時点の外貨準備高は前年同月比18.4%減の36億8,490万ドルとなった。
こうした外貨準備高の減少に関連し、3月以降、急激に通貨トゥグルク安が進行している。モンゴル政府が「新型コロナ特措法」(注1)を2020年6月に施行して以降、BOMは為替を安定させるべく取り組んできたこともあり、相場は1ドル=2,850トゥグルク前後を維持していたが、2022年2月後半から徐々にトゥグルク安が進み、3月以降に急落した。4月18日時点で1ドル=3,050トゥグルクを超え、対ドルで前年比7.0%、前月比4.7%下落している(添付資料図参照)。
BOMは3月24日に政策金利を9.0%に引き上げたが(2022年4月19日記事参照)、現時点でトゥグルク安に歯止めがかかっていない。
モンゴル国内の報道は、トゥグルク安の要因の1つとして、ロシアに対する諸外国の経済制裁以降の、ロシア人・ロシア企業によるドル現金の持ち出しによる外貨不足を指摘している(「News.mn」3月25日)。
外貨不足を受けて、モンゴル市中銀行の中には、外貨の両替、送金に上限額を設けているという報道がある。実際に、4月18、19日に各市中銀行に聞き取り調査を行ったところ、ハーン銀行は30万トゥグルク(約1万2,600円、1トゥグルク=約0.042円)、TDBは100万トゥグルク、ゴロムト銀行は150万トゥグルク、国営ステート銀行は100万トゥグルクを1日当たりの上限として、各行は独自に外貨両替・外国送金の制限を実施している(注2)。これらの制限により、在モンゴル日系企業の間でも、モンゴルでの売り上げを円に両替できない、日本に送金できない、などの支障が生じている。
これに対し、BOMは4月11日付プレスリリースで「当行が市中銀行各行に対し外国為替取引に制限を課しているという報道は誤報で、各銀行の独立した判断によるもの」との見解を発表している。
(注1)2022年末まで延長された「新型コロナ特措法」によると、モンゴル銀行は、外貨準備高と為替の安定を維持するため、金融機関に対して以下の措置を2022年12月31日まで行う予定。
- 個人・企業の外貨取引を制限。
- 外貨建て預金をペイオフの対象外とする。
- 当座預金に利息をつけない。
(注2)非現金(電信取引)のみの取り扱い。外貨現金への両替は各行とも受け付けていない。
(藤井一範)
(モンゴル、ロシア)
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