ブチッチ大統領再選、議会選挙で与党が第1党を維持
(セルビア)
ウィーン発
2022年04月08日
セルビアで4月3日に、大統領選挙、議会早期解散選挙、およびベオグラード市などを含む一部の地方自治体選挙が実施された。8人の立候補者で争われた大統領選は、好調な経済成長〔統計局の2月28日の発表によると2021年度第4四半期のGDP成長率(推定値):前年同期比7.0%、前期比1.7%〕、高速鉄道計画の実施、好調な外国投資、および感染症専門病院設立などの実績を前面に出し、政策の成功を強調した現職のアレクサンダル・ブチッチ大統領が58.54%の得票率を獲得し、圧勝した(添付資料表1参照)。
一方、早期解散により、19の届出政党で争われたセルビア議会(定数250)選挙においても、ブチッチ大統領率いる中道右派・与党のセルビア進歩党(SNS)が第1党となり一定の勝利を収めたが、前回選挙でボイコットした旧民主党系政党が今回の選挙では参加したこと、および、前回選挙から比例代表制選挙の阻止条項(注)が今までの5%から3%に変更されたことなどから、思うように票が伸びず(得票率42.91%、前回は60%超え)、単独過半数には及ばなかった(添付資料表2参照)。
SNSが単独過半数を獲得できなかったことを敗北とみるか、旧民主党系が連合を組んで戦った「セルビア勝利のための統合」が13.70%しか獲得できなかったことで、こちらを敗北とみるのかで意見が分かれている。
報道によれば、早々にSNS党本部で勝利宣言をおこなったブチッチ大統領は4月3日、ウクライナ危機が今回の選挙結果に大きな影響を与え、セルビアは劇的に右派に傾いたが、SNSはセルビアが右派に傾きすぎないようにうまく対処していくと信じていると述べるとともに、少数民族政党のボイボディナのハンガリー系同盟(SVM)と連立を組むことが決定しており、セルビア議会の250議席の過半数に当たる125席以上を確保することになるとも述べた。
今回の大統領選・議会選の結果について、オーストリアのグラーツ大学南東欧研究所のフロリアン・ビーバー教授は4月5日付の「デアスタンダード」紙のインタビューで、「大統領選・議会選の結果は予想どおり。ロシアのウクライナ軍事侵攻は、大統領選のスローガンに『平和・安定』を前面に押し出し、食料品とエネルギーの安定供給を確保することを強調したブチッチ大統領に有利に働いた。ブチッチ大統領は、EUとロシアの間をうまく立ち回る外交政策を継続するだろう」と分析している。
(注)比例代表制選挙において、政党などが議席を獲得するために必要な最低限の得票率(閾値)を規定する条項。
(鈴木秀男、田中由美子)
(セルビア)
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