米主要企業のロシア事業停止続く、レピュテーションリスクも懸念
(米国、ロシア、ウクライナ)
ニューヨーク発
2022年03月10日
米国の主要企業によるロシア関連事業の停止が続いている(米主要企業、ブラック ジャック)。主要国による対ロシア制裁の影響が大きいとみられるが、米国内の世論でロシア事業を継続することに対する批判が高まっており、そうしたレピュテーションリスクを懸念しての動きもみられる。
直近では、外食チェーンのスターバックス(3月4日)、マクドナルド(3月8日)、飲料大手のコカ・コーラ(3月8日)、ペプシコ(3月8日)といったグローバルに展開する主要企業がロシア関連事業の停止・縮小を発表した。
これら動きの背景には、国内からの批判の高まりが大きく影響していることがあるとみられる。米調査会社のモーニング・コンサルトが実施した世論調査(注)によると、回答者の75%が、米企業によるロシアとのビジネスの遮断または停止を支持するとの結果が出ている。主要州の知事も、州内の公的機関や年金基金に対して、ロシアに関する新規投資の禁止などを指示する知事令を発令している(米カリフォルニア州知事、3つの州年金基金にブラック)。ニューヨーク州でもキャシー・ホークル知事の知事令を受けて、公的年金基金としては全米最大規模となる同州の退職年金基金を監督するトーマス・ディナポリ州会計検査官が3月1日、ロシア企業への新規投資の禁止と、投資済み案件の精査および必要に応じた投資引き揚げを決定した。試算によると、同基金は1億1,080万ドルをロシア企業に投資しているとされる。さらに、ディナポリ州会計検査官は3月4日には、同基金の投資先であるマクドナルドに対して、現下の状況を受けて、ロシアでの事業継続や投資は「法律、コンプライアンス、営業、人権・人事、レピュテーションの面で深刻なリスクに直面している」として、事業の停止または終了を求める書簡を送っていた。ロイター(3月4日)によると、ディナポリ氏はこのほか、ペプシコや化粧品大手のエスティーローダーなどにも同様の書簡を送っていた。
また有識者の中からも、政府による制裁の動きと合わせて、産業界はロシアとのビジネス関係を遮断すべきとの意見も出ている。イェール大学のジェフリー・ソネンフェルド教授は、1980年代の南アフリカ共和国でのアパルトヘイト政策への反発で、200を超える企業が同国から撤退したことが米国の外交政策を後押しした例があるとして、米企業に対して、この世界的危機のさなかで米国の価値観を主張すべきだと呼び掛けている。
(注)2月26~27日に、米国の成人2,210人を対象に実施したアンケート調査。
(磯部真一)
(米国、ロシア、ウクライナ)
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