英政府、ウクライナ情勢が与えるエネルギー安全保障への影響を分析
(英国、ロシア)
ロンドン発
2022年03月01日
英国政府は2月25日、ウクライナ情勢が英国のエネルギー安全保障に与える影響について、ファクトシートを公表した。また、クワシ・クワルテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)相も28日、同内容についてツイートした。概要は以下のとおり。
- 英国が直面しているのは、ガス供給の安定性の問題ではなく、国際市場によって設定された価格高騰だ。
- 他の欧州諸国と異なり、英国はロシアのガス供給に依存していない。最大のガス供給源は英国大陸棚で、輸入の大部分はノルウェーなどの信頼できる供給元から得ている。ロシアからの輸入は、2021年の英国ガス総供給量の4%未満だった。
- 英国の多様なエネルギー供給源として、英国とノルウェーの大陸棚からのガスパイプライン、欧州大陸とのガスパイプラインの相互接続、3つの液化天然ガス(LNG)ターミナルがある。
- 原油および石油製品については、英国は重要な生産国。ディーゼルの場合、国内需要は、国内生産と、オランダ、サウジアラビア、米国など多様な信頼できる供給元からの輸入で充足されている。
- 他の国々と同様、英国も万一、石油供給が大きく混乱する場合に備えて備蓄している。また、その水準は国際エネルギー機関(IEA)が定める水準である90日分を大幅に上回る。
- 政府は、エネルギー価格高騰に直面する世帯の負担軽減のため、91億ポンド(約1兆4,105億円、1ポンド=約155円)規模の支援を行う()。
- 長期的な解決策として、ガスは再生可能エネルギーよりも高価で、ガスからの脱却が必要だ。そのためには、風が吹かず、日照量が少ない場合のための新たな原子力発電所が必要。また、国内でより安価でクリーンな電力を発電すればするほど、世界のガス市場の影響を受けにくくなる。
- エネルギー料金を抑える最善の方法は、エネルギー効率の改善を通じたガス使用量の削減。住宅の省エネの推進が必要で、そのために政府は66億ポンドを投じ、効率改善に取り組んでいる。
エネルギー大手が相次ぎロシアから撤退表明
英国石油大手BPは2月27日、ロシア大手のロスネフチの株式(19.75%)を売却予定としたほか、BPの最高経営責任者バーナード・ルーニー氏がロスネフチ取締役から即時辞任すると発表した。英国石油大手シェルも28日、ロシア国営石油大手ガスプロムとの合弁を解消する考えを表明。また、天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」への関与も終了する考えも示した。
(宮口祐貴)
(英国、ロシア)
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