米エネルギー省、シェニエール・エナジーにLNG輸出を承認、欧州への供給加速を急ぐ
(米国、EU、英国、ロシア、ウクライナ)
ニューヨーク発
2022年03月24日
米国エネルギー省は3月16日、米国液化天然ガス(LNG)大手のシェニエール・エナジーが開発する2つのLNGターミナル〔Sabine Pass(ルイジアナ州)とCorpus Christi(テキサス州)〕からの輸出を承認した。
当該ターミナルからの輸出はこれまで、カナダやメキシコなど、米国と自由貿易協定(FTA)を締結している国に限定されていたが、今回の承認により欧州全域を含む自由貿易協定を結んでいない国や地域に対しても可能となる。2つのLNGターミナルからは、1日当たり約7億2,000万立方フィートのLNGを輸出できる。また、国内法などで禁止されている国・地域でなければ、米国で稼働中の全LNGプロジェクトから輸出可能となる。
エネルギー省によれば、米国は世界最大のLNG輸出国で、今後の生産容量の追加により、2022年末までにさらに2割の輸出量増加が見込まれている。2021年時点でのEUと英国のLNG輸入先国ごとの割合をみると、米国26%、カタール24%、ロシア20%と米国産LNGが既にトップシェアを誇っているが、ロシア産の代替として今後さらに輸出量が増える見通しだ。
バイデン政権は、原油の生産能力も増強していく考えだ。米国は世界最大の原油生産国だが、EUは原油輸入量の27%(2021年)をロシア産に頼っているほか()、米国内でもガソリン価格の高騰が問題となっており、原油の増産が急務となっている。エネルギーブラック ジャック 勝率局(EIA)によると、米国の原油生産量は2021年12月に日量で平均1,160万バレルを下回る水準だったが、2022年には年平均日量1,200万バレルまで上昇し、2023年には過去最高となる年平均日量1,300万バレルを予測している。ロシアは原油を1日平均500万バレル輸出しており(2022年3月2日記事参照)、2023年にかけての米国の日量100万バレルの増加は、ロシアの輸出量の2割に相当する。
バイデン政権幹部による、エネルギー業界への働きかけも活発だ。エネルギー省のジェニファー・グランホラム長官は2022年3月9日、エネルギー業界との会合の中で「われわれは戦争の危機に瀕しており、緊急事態にある」「短期的にエネルギーの供給量を増やさなければならない」と述べ、9,000以上ある掘削許可済みで未利用の連邦公有地の活用を例に挙げて、天然資源の増産を訴えた。一方、長期的にはクリーンエネルギー化の流れがあり、業界として大規模投資や増産に動きにくい側面もあるため、これらの動向が注目される。
(宮野慶太)
(米国、EU、英国、ロシア、ウクライナ)
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