ハイテク産業の人材供給が逼迫、ウクライナ情勢も影響
(イスラエル、ウクライナ)
テルアビブ発
2022年03月28日
イスラエルの「タイムズ・オブ・イスラエル」紙(3月22日付)は、同国のハイテク産業の主に研究開発(R&D)部門の人材供給が逼迫していると報じた。
同国のハイテク産業は、日本からの投資額が2021年に過去最高を記録した()ほか、世界からの投資額も2021年に前年比で約2.5倍と過去最高を記録するなど、旺盛な資金調達と活発な技術開発が続いている。
イスラエルの大手ベンチャーキャピタル「アワクラウド」が3月22日に公表したスタートアップ企業へのアンケート調査によると、回答企業のうち72%が2021年第4四半期(10~12月)に「採用をより増やす」と回答するなど、拡大する事業を支える人材募集を進めている。また、74%が「ソフトウエア開発・研究開発部門の人材を主に採用する」、79%が「ソフトウエア開発・研究開発部門の人材の採用競争が最も激しい」と回答している。このように、主に研究開発部門の熟練技術を有する人材の供給が逼迫し、人材獲得競争が過熱している状況だ。
また、同調査では64%の企業が国外でも雇用していると回答するなど、国内での人材獲得競争が厳しいこともあり、国外で優秀な人材を雇用する傾向もある。北米や欧州などの主要市場の営業拠点での雇用者に加えて、研究開発部門でも一定数をオフショアで雇用しているとみられており、ウクライナもその1つだった。米国の「ウォールストリート・ジャーナル」紙(2月24日付)によると、ウクライナには8万5,000人から10万人ほどのソフトウエア開発やIT関連の技術者がおり、ファイバー・インターナショナルやウィックスなどのイスラエル企業もこうした技術者を雇用しているという。
イスラエル国内で人材供給が逼迫する中で、これまでウクライナ人技術者が相当数を補完する構図がみられていたが、現下のウクライナ情勢が長引くと、人材の供給状況が改善せず、ハイテク産業にとっては大きな課題となりかねないとみられる。
(吉田暢)
(イスラエル、ウクライナ)
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