米テスラ、ドイツの「ギガファクトリー」を正式に開所
(ドイツ、米国)
ベルリン発
2022年03月30日
米国のバッテリー式電気自動車(BEV)メーカーのテスラは3月22日、ドイツ北東部のブランデンブルク州に設立したBEVとリチウムイオン電池の新工場「ギガファクトリー」(2022年3月14日記事参照)を正式に開所し、稼働させた。
開所式には、オラフ・ショルツ首相、ロベルト・ハーベック経済・気候保護相、ブランデンブルク州のディートマール・ボイトケ州首相をはじめとする首脳陣が参加した。ショルツ首相は、ドイツにおける初の外資系企業によるBEV専用工場が東部ドイツに設立されたことは、東部ドイツが産業をリードする「兆候」であるとともにドイツ東西統一が機能している証しだと表現し、テスラの進出を歓迎した。
ドイツ連邦自動車局(KBA)によると、2021年のドイツにおけるテスラの新車販売台数は3万9,714台で前年比2.4倍と、需要が急激に伸びている。ドイツ経済紙「ハンデルスブラット」(3月21日)によると、納品は10カ月待ちともいわれ、当初予定の年間50万台の生産が可能となるフル稼働体制に入るのは、最短で3カ月後の見込みだ。
行政の承認手続きは異例の早さも、今後さらなる手続き迅速化が必要
テスラの新工場は、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が2019年11月12日に計画を表明()してから、861日でオープンに至った。テスラを誘致したブランデンブルク州は、地元行政機関などと連携し、工場設立の許認可などの諸手続きを異例ともいえるスピードで推進し実現したと評価した。
ドイツ産業連盟(BDI)のジークフリート・ルスブルム会長は、今回のテスラの投資案件は「ドイツにおける投資プロジェクトの手本となる」と評価した。喫緊の課題となっているのは、エネルギー供給源の速やかな転換()や、特に鉄鋼、化学、セメント、エネルギーなどの分野への投資の必要性だ。しかし、これらには「膨大な行政手続きのマラソン」が待ち構えていると指摘。連邦政府と州政府に対し、許認可などの諸手続を簡素化する大幅な改革を期待するコメントを寄せた。
ハーベック経済・気候保護相も、再生可能エネルギーや送電網の拡充など、インフラ投資には今回のテスラの案件よりも、さらなるスピードが必要だとして、現行の行政手続き迅速化にあらゆる手を尽くすとコメントした。現政権の連立協定書には「官民どちらの投資も、迅速かつ効率的に、確実な目的達成のために実行できるよう、政府は政権1年目に必要な全ての決定を下し、実施しなければならない。手続きの所要期間を現行の少なくとも半分に短縮することを目指す」と明記されており、これを推進することが求められている。
(中村容子)
(ドイツ、米国)
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