トカエフ大統領、権威主義から民主主義への転換表明

(カザフスタン)

タシケント発

2022年03月24日

カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は3月16日、上下院の合同会議で「新しいカザフスタン:新生と改革の道」と題した年次教書演説を行い、政治改革に関する10の指針(添付資料表参照)を発表した(大統領府公式ウェブサイト)。

ヌルスルタン・ナザルバエフ前大統領は、そのカリスマ性と権威主義によって国家を統治してきた。トカエフ大統領は演説の中で、個人崇拝と大統領の縁故による政治の独占により腐敗した政治、経済、社会を抜本的に改革するため、議会の権限を強化し、国家と国民の利益を優先する民主主義国家建設を目指すと表明。最大与党のアマナト(注)による国家機構の独占を禁止するため、大統領職をはじめ、閣僚や地方行政長官、中央選挙管理委員会と憲法評議会の委員は任期中、党活動を禁止することを法制化する。

大統領の権限も制限する。大統領の親族が公職に就くことを禁止するほか、大統領による上院議員の特別任命枠を削減し、大統領の一存で決めてきた州知事の任命・罷免を地方議会と住民の意向に基づいて行う。また、複数政党制実現のため、新党創設の条件を大幅に緩和する。

国家戦略の1つである地方自治の強化と地方経済の効率的な発展のため、地方州の数を増やす。具体的には、東カザフスタン州、アルマトイ州、カラガンダ州からそれぞれアバイ州、ジェティスー州、ウルタウ州を新設する。州の名称はカザフ人の歴史的人物、地名にちなむ。住民の声が届く行政と住民に親しまれる名称にすることで、地域経済の発展と住民の定着を図る。

トカエフ大統領の教書演説について、メディアやSNS上では「ポピュリズム的」「前政権と変わらない」との意見がある一方で、トカエフ大統領の政治改革と強力なリーダーシップに期待する声も多い。欧米諸国の対ロシア経済制裁が強まる中、カザフスタン国内経済への影響も広がっているからだ。通貨テンゲは対ドルで40%下落し、ロシア政府が3月10日に行った主要穀物、砂糖などの禁輸措置の影響で、カザフスタン国内で関連製品の値段が高騰している。

(注)最大与党・ヌルオタン(輝く祖国)は3月1日に開催した臨時党大会で、党名をアマナト(未来への信託)へ変更した。

(増島繁延)

(カザフスタン)

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