遼寧省のテクノロジーが支える北京冬季オリンピック・パラリンピック

(中国)

大連発

2022年03月01日

2022年の北京冬季オリンピック・パラリンピックでは、人工知能(AI)、拡張現実(AR)、5G(第5世代移動通信システム)など最新の科学技術の活用が注目されている中、中国・遼寧省の大学や企業が開発した製品・技術も貢献している。

オリンピック・パラリンピックにおける新型コロナウイルスの感染防止のため、大連理工大学が開発した新型コロナウイルス浄化装置「京蘭方舟」が採用された。同装置に搭載される吸着材料は、新型コロナウイルスやH1N1ウイルスを効率的に吸着・死滅させる機能がある。また、同大学が開発した、高強度・軽量化を実現したスキーヘルメットは、耐衝撃性を向上させており、アスリートの安全性確保に貢献した。このスキーヘルメットは、ロケット機材にも用いられる素材で作製された、

その他にも、中国科学院瀋陽自動化研究所などが開発したロボットが、開幕式の聖火リレーの水中での聖火受け渡しに活用された。また、大連鋭動科技が開発した「人工知能マーカーレスモーションキャプチャシステム」(注1)は、スポーツ選手の動きをデジタル技術で分析・評価し、スピードスケート、クロスカントリースキー、スケルトンなど多くの競技に取り入れられた。また、多言語音声言語サービスの小牛翻訳(瀋陽市)が、キーテクノロジーを提供し、通訳設備などのシステム開発に用いられ、大会におけるコミュニケーションをサポートした。

遼寧省は、2015年からイノベーション創出に向けた政策支援を強化しており、科学技術牽引型の中小企業総数が1万4,000社を超えている。2021年にも同類の企業が4,009社設立され、ガゼル企業(注2)が215社、潜在的ユニコーン企業(注3)が5社誕生した。さらに、遼寧省は、2023年までに科学技術牽引型の企業総数が5万社に到達することを目指している。

(注1)マーカーレスモーションキャプチャシステムとは、マーカーを使用せず、複数台のハイスピードカメラ映像を利用した3次元動作分析システムで、得た動画データを基にスポーツパフォーマンスなどの動作解析などが可能。

(注2)シンクタンク「胡潤研究院」の定義によると、ガゼル企業とは、2000年以降に創業し、今後3年以内にユニコーン企業になる高い可能性を有する非上場企業。

(注3)シンクタンク「胡潤研究院」の定義によると、潜在的ユニコーン企業とは、企業の評価額が1億ドル以上で、今後3年以内にユニコーン企業(創業10年以内、評価額10億ドル以上)になる高い可能性を有する非上場企業。

(李莉)

(中国)

ビジネス短信 2f546f80425ffb1b