VW、次世代BEV工場を新設へ

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年03月14日

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の監査役会は3月4日、ドイツ北部のニーダーザクセン州ボルフスブルク本社工場の近くに、バッテリー式電気自動車(BEV)の次世代モデル「トリニティ(Trinity)」の生産工場を新設することを承認外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回の計画は、2021年12月に発表したVWグループの2022~2026年投資計画「プランニング ラウンド70」の中にあったもの(2021年12月16日記事参照)。新工場はVWのボルフスブルク本社工場に隣接するバルメナウに建設する。着工は2023年春で、総投資額は約20億ユーロ。車両生産は2026年からの予定。

新工場でのトリニティ生産は1台当たり10時間を目標にする。具体的には、バリエーションや部品点数を減らすとともに、自動化を進めて生産ラインを簡素化、物流も見直し、生産にかかる時間を減らす。マスコミ報道などによると、VWのBEV代表モデル「ID.3」の生産は、ツビッカウ工場で約20時間かかるとされる。また、温室効果ガス削減の観点から、トリニティは二酸化炭素中立となるかたちで生産する。

トリニティはBEVの次世代を担うVWの基幹ブランドで、2021年3月に発表された。充電時間を大幅に減らすとともに、航続距離700キロ以上を目指す。最新のソフトウエアを備え、レベル4(注1)の自動運転を可能にする。車体は「スケーラブル・システム・プラットフォーム(SSP)」を活用する。SSPは、BEVのプラットフォーム「MEB」(注2)、高級車向けプラットフォーム「プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)」を統合するもの。VWグループはSSPプラットフォームを基盤に、合計4,000万台以上のBEVを生産する予定。トリニティは量産車用にSSPを使用する初のケースとなる。

「プランニング ラウンド70」によると、VWは2026年までに電動化に総額520億ユーロを投資する予定。また、2026年の販売台数に占めるBEVの比率を25%にまで高める目標も挙げる。米国テスラがドイツ・ブランデンブルク州に建設した工場の生産が条件付きで最終承認されるなど(2022年3月14日記事参照)、ドイツ国内の自動車メーカーのBEV生産能力は、今後さらに拡大すると見込まれる。

(注1)自動車技術者協会(SAE)が定義する自動運転のレベル。レベル4は、限定された領域内で加速・操舵(そうだ)・制動を全てシステムが行い、ドライバーが全く関与しない状態での走行が可能。

(注2)Modularer E-Antriebs-Baukastenの略。VWが開発した電動車向けモジュラープラットフォーム(共通設計・部品共通化のための基盤)。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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