第6回EU・AU首脳会議、インフラ開発と新型コロナ対策で進展
(EU、アフリカ)
ブリュッセル発
2022年02月22日
EUとアフリカ連合(AU)の第6回首脳会議が2月17、18日にブリュッセルで開催され、アフリカからはAU加盟国55カ国・地域のうち、約40カ国・地域の首脳が参加した。開催前の各種報道では、特に保健・衛生や環境・エネルギーの分野でEU・AU間の対立を指摘する声が聞かれたが、最終的には「2030年に向けた共同ビジョン」と題した共同宣言を採択し、一定の合意を図ったかたちとなった。
会議後の共同記者会見で、欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長は、議題の設定を含めてEUとAU双方が参画することで準備が進められた点を強調、相互理解に基づく「パートナーシップの再構築」につながったと評価した。その上で、過去の首脳会議では野心的な決定が多く成された一方で、成果が伴わないケースもあったことを認め、今後は実効性を高めるためにフォローアップ体制を整備することが重要だと指摘した。AU議長国セネガルのマッキー・サル大統領も、準備段階で協議が十分に行われたとし、優先事項の共有が図られたという点で、今回の首脳会議は「イノベーティブ」だったと評価した。
大規模インフラ支援表明、新型コロナワクチンの現地生産支援も
今回の首脳会議では、EU側が最低でも1,500億ユーロをアフリカ向けの投資パッケージとして提供することを表明した。これは、EUの域外向けインフラ支援戦略の「グローバル・ゲートウェイ」(ブラック ジャック 確率、3)の総動員額の半分に相当する。当該投資パッケージは、エネルギー、デジタル、輸送といった各種インフラ開発やグリーン社会への移行支援などに振り向けられる。特に輸送インフラについては、AU委員会のムーサ・ファキ委員長が「地域間の連結性に課題がある」と指摘するとおり、アフリカ側の関心も高く、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)を強化するものとして、アビジャン~ラゴス、マプト~ウォルビスベイ間など11の回廊プロジェクトを対象として選定した。エネルギーについては、再生可能エネルギーの発電容量を2030年までに300ギガワット(GW)増強することを目標とするとしながらも、アフリカ側の指摘を踏まえ、エネルギー転換プロセスでは利用可能な天然資源を活用するとの文言を共同宣言に盛り込んだ。
新型コロナウイルスワクチンの供給不足を背景として対立が先鋭化していた保健・衛生分野では、EU側は、2022年半ばまでに最低でも4億5,000万回分の新型コロナワクチンを供給するとした。また、今回の首脳会議の機会に実施されたイベントで、世界保健機関(WHO)は、エジプト、ケニア、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ共和国、チュニジアの6カ国が「メッセンジャーRNAワクチン技術移転ハブ」として選定されたと表明した。今後、EUはパートナーとしてワクチン製造のための技術移転の促進を支援するとした。
(山田泰慎)
(EU、アフリカ)
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