大統領がインフレ防止シールド2.0関連法に署名、時限的にVAT引き下げへ
(ポーランド)
ワルシャワ発
2022年02月03日
ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は1月26日、「インフレ防止シールド2.0」に関連する一連の法改正に署名した。これは、12月に発表したインフレ防止シールド(モラビエツキ首相がブラック ジャック)に続く施策で、1月11日にマテウシュ・モラビエツキ首相が提案していた。首相は同施策の導入について、新型コロナウイルス感染拡大の影響による世界的な経済危機や、ロシアによるガス供給に関連する政治的な動き、EUのエネルギー政策などの外的要因によって引き起こされている世界的な物価上昇の影響をとどめることが目的と説明している。「インフレ防止シールド2.0」は2月1日から7月31日までの6カ月間導入する。
主な施策は以下のとおり。
- 燃料の付加価値税(VAT)の税率を23%から8%に引き下げ
- 電気のVATの税率を引き下げて5%としている現在の措置を延長
- 地域熱提供(注1)にかかる費用のVATの税率を8%から5%に引き下げ
- 農業生産で使用する肥料などのVATの税率を0%へ
- 天然ガスのVATの税率を8%から0%に引き下げ
- 肉や魚、野菜、乳製品などの基本的な食品のVATの税率を5%から0%に引き下げ
ING銀行のチーフエコノミストによると、インフレ防止シールドは根本的な問題を解決する薬ではなく、鎮痛剤のようなものであり、一時的には物価上昇の影響を軽減することはできるが、将来のインフレ率を下げることはできないとしている。また、消費者物価指数(CPI)の上昇のピークを遅らせるだけで、その結果VAT軽減が終了する2022年7月のピークが非常に高くなり、CPIの上昇は約10%の水準に到達する可能性もあるとみている。
中央統計局(GUS)によると、ポーランドの2021年12月のCPI(速報値)は前年同月比8.6%上昇と、過去20年間の最高値だった11月の7.7%上昇を上回った。ポーランド経済研究所が2021年12月に発表したレポートによると、食品やエネルギー価格、賃金の上昇のため、2022年のCPI平均上昇率は7.3%となり、ポーランド経済の成長を阻害するとしている。また、EU加盟国(注2)の中でポーランドはラトビアに次いで賃金上昇と物価上昇のスパイラルに陥る可能性が高い国だと指摘している。
(注1)地域ごとに熱供給のパイプランがあり、それに接続することで住宅に暖気が送られる。家賃に暖房費が含まれる場合には、地域熱供給にかかる費用のVATの税率を引き下げると、家賃も下がることになる。
(注2)EU加盟27カ国のうち19カ国を対象に分析した結果。
(今西遼香、ニーナ・ルッベ)
(ポーランド)
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