2021年の欧州の道路貨物輸送、コスト高騰とブレグジットに翻弄される
(EU、英国)
ブリュッセル発
2022年02月08日
国際道路輸送連盟(IRU)は2月2日、2021年第4四半期(10~12月)の欧州道路貨物輸送料金ベンチマークが過去最高の108.3ポイントだったと発表した(プレスリリース)。この指標は、英国のTi(Transport Intelligence)とフランスのデジタルプラットフォーム企業Upplyが欧州の主要国際トラックレーンの料金やドライバーの賃金などを基に、2017年第1四半期(1~3月)を100.0として四半期ごとに算出しているもので、IRUは2021年第3四半期(7~9月)分から算出に加わっている。IRUは輸送料金が高騰している要因として、燃料などのコスト上昇、道路貨物輸送の需給バランスの不一致、運転手不足などを挙げた。
IRUによると、国際幹線道路を利用する長距離トラックの運送コストのうち、燃料が全体の約3分の1を占める。2021年の軽油価格はスペインやドイツ、フランスなど欧州主要国で1年で約25%上昇した。同じく運送コストの約3分の1に相当する運転手に係るコストも、運転手との雇用関係を維持するため、多くの貨物運輸事業者は1年間に複数回、賃上げを行うことを余儀なくされた。IRUは、EUが2020年に採択した「モビリティ・パッケージ」の「運転手の配属に関する規制とその執行要件に関する指令」など(2020年7月15日記事参照)が2月から施行されることから、運転手のコストは2022年にさらに上昇すると予測した。また、世界的な半導体不足の影響でトラック生産が減少したため、新車の価格が上昇し、続いて中古車の価格も上昇したことから、車両費の高騰も運送コスト上昇の一因となっているという。
道路貨物輸送の需要は急増も、運転手不足で供給が追い付かず
IRUは、欧州各国で新型コロナウイルス危機からの経済回復に伴い、製造業や小売業などで道路貨物輸送への需要が急激に高まり、運送業者は運転手の賃上げなどを行って供給体制を整えようとしたため、結果として輸送料金は常に高値が続いたと指摘し、こうした状況は今後数カ月継続すると予測する。
道路貨物輸送のサプライチェーンに深刻な影響を与えているのが運転手不足だ。IRUのデータによると、2021年は欧州各国で運転手が不足したが、特に深刻だったのは最大で10万人の求人が埋まらなかった英国だ。新型コロナ危機に加え、英国のEU離脱(ブレグジット)により、労働ビザが必要となったEU加盟国出身の運転手が英国を離れ、新規雇用にも苦しんだ。英国物流部門では長距離トラックの運転手だけでなく、倉庫業務や配送に携わる人材も不足したという。
ブレグジットは通関手続きの復活によるコストの増加と物流の遅滞を招き、加えて、英国では軽油価格が1リットル当たり1.75ユーロ相当と欧州最高値となり、コスト増に拍車がかかった。特に、英国からフランスへの輸送コストは離脱に伴う移行期間終了後から高騰している。2021年第1四半期の英国からフランスへの輸送コストは、前年同期比で12.8%増と急上昇した後、高止まりが続き、第4四半期は同10.8%増となった。
(滝澤祥子)
(EU、英国)
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