12月の米小売売上高、前月比1.9%減と5カ月ぶりの減少、予想を大幅に下回る
(米国)
ニューヨーク発
2022年01月18日
米国商務省の速報(1月14日付)によると、2021年12月の小売売上高(季節調整値)は前月比1.9%減の6,268億ドルと、7月(1.6%減)以来5カ月ぶりの減少になり(添付資料表参照)、ブルームバーグがまとめた市場予想の0.1%減を大幅に下回った。なお、11月の売上高は0.3%増(速報値)から0.2%増に下方修正された(関連ブラック ジャック トランプ)。
無店舗小売り、総合小売り、衣料などが押し下げ要因に
売上高の落ち込みは13業種中10業種と、広範囲にわたった。業種別にみると、無店舗小売りが前月比8.7%減の826億ドルで、寄与度マイナス1.23ポイントと全体を最も押し下げた。次いで、総合小売りが1.5%減の696億ドル(寄与度:マイナス0.17ポイント)、衣料が3.1%減の261億ドル(マイナス0.13ポイント)で減少に寄与した。一方、建材・園芸用品は0.9%増の417億ドルと増加した。
新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大に加え、サプライチェーンの混乱による商品不足や配送遅延の可能性を小売店舗などが警告したことにより、消費者が例年よりも早い時期からホリデーショッピングを開始したことが影響したとみられる(CNN1月14日)。また、顧客管理(CRM)プラットフォーム大手のセールスフォース・ドットコムは、オンラインでの値引き率が減少し、商品の平均販売価格は11%増加したと分析している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙2021年11月30日)。今回の発表を受けて、オックスフォード・エコノミクスのリードエコノミスト、リディア・ブスール氏は「消費の低迷は2021年第4四半期の経済成長を圧迫し、2022年第1四半期に向けた勢いを鈍らせる可能性がある」と指摘した。先行きについては、オミクロン株の感染者数が急増する中、短期的な道筋は不安定になるものの、強い労働市場や所得の伸び、過剰な貯蓄が組み合わさって、今春には個人消費が回復するとみている(CNN1月14日)。
また、民間調査会社コンファレンスボードが2021年12月22日に発表した12月の消費者信頼感指数(速報値)は115.8と、11月(111.9)より3.9ポイント上昇した。同指数は現在の雇用環境や経済状況に質問の重きを置いているが、内訳をみると、現況指数は144.1(11月:144.4)で0.3ポイント減少し、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は96.9(90.2)で6.7ポイント上昇した。コンファレンスボードの経済指標シニアディレクターであるリン・フランコ氏は同日の発表で、新型コロナウイルスや物価上昇に対する懸念はいずれも下がったと指摘したが、速報値は同社が実施したアンケート調査のうち2021年12月16日までに回収した結果を基に算出されるため、オミクロン株感染拡大の影響は十分に反映されていない可能性がある。
米国ミシガン大学が2022年1月14日に発表した1月の消費者信頼感指数(速報値)は68.8となり、前月の70.6から1.8ポイント減少した。こちらは現在の家計の支出や収入の状況に重きを置いており、現状指数は73.2(12月:74.2)、期待指数も65.9(68.3)といずれも低下した。ミシガン大学の消費者調査部門のチーフエコノミスト、リチャード・カーティン氏は、政府の経済政策に対する信頼が2014年以来の低水準になっていると指摘した。経済的、非経済的に大きな混乱がある時代に財政政策と金融政策の微調整が必要な場合、その適切な組み合わせを計るのは難しい課題だと述べ、最も重大かつ困難な課題は、発展途上の賃金価格スパイラルを鎮めることだとした。
(樫葉さくら)
(米国)
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