NY連銀がサプライチェーンに関する新指標を公表、混乱のピーク越えの可能性示唆
(米国)
ニューヨーク発
2022年01月18日
米国のニューヨーク連邦準備銀行(NY連銀)は1月4日、サプライチェーンに関する新たな経済指標、グローバル・サプライチェーン圧力指数(GSCPI)を公表した。GSCPIは世界のサプライチェーンに影響を及ぼす潜在的な混乱を包括的に測る目的で開発され、海上輸送や航空便など輸送コストを追跡しているバルチック海運指数や、米国サプライ管理協会やIHS マークイットが取りまとめる各国の製造業購買担当者景気指数(PMI)など、27の変数を基に算出される。今回は、1997年9月から2021年12月までのGSCPIの推移が公表された。
同推移によると、期間中の平均をゼロとした水準において、GSCPIはパンデミックが始まった2020年2月から上昇し、同年4月には3.86を記録した。その後はいったん低下したが、2021年4月以降再び上昇し、10月には4.37と最高水準に達している。なお、直近12月は4.25に低下した。パンデミック以前のGSCPIは、東日本大震災発生後の2011年4月に上昇したがそれでも1.73、米中対立が激化した2017年から2018年にかけても1近辺で推移しており、昨今のサプライチェーンの混乱が歴史的な水準であることが確認できる(添付資料図参照)。
NY連銀によると、これまで大幅に上昇していた輸送コストが最近鈍化し始めており、「サプライチェーンの圧力はいまだ歴史的な高水準だが、ピークに差しかかっており、今後緩和される可能性があることを指数は示唆している」と指摘している。ただ、まだ完全な指標ではなく、幾つかの需要要因を反映しているのにすぎない点に留意が必要とした。
サプライチェーンに対する圧力緩和の兆しは、ほかにも見られる。米国労働省が2022年1月13日に公表した2021年12月の生産者物価指数は前月比で0.2%増と、11月の1.0%増から大きく鈍化した。特に財の価格は0.4%減となり、2020年4月以来初めて減少に転じた。サービスの価格も0.5%増(前月:0.9%増)に鈍化しており、貿易で0.8%増(1.2%増)、運輸・倉庫で1.7%増(2.7%増)と、サプライチェーンに係る項目で緩和の兆しがみられる。
なお、川下の消費者物価はいまだに高い水準で推移しており、緩和の兆しはまだ見られない(2022年1月13日記事参照)。GSCPIの公表日は現時点で不定期としているが、同指数が今後どのように推移するのか、それに伴って生産者物価の上昇がさらに緩和され、いつ消費者物価に波及していくのか、今後の動きが注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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