米上院、投票権法案を否決、議事妨害規則の変更も実現せず
(米国)
ニューヨーク発
2022年01月21日
米国連邦議会上院は1月19日、下院で可決済みの投票権法案(H.R.5746)の採決を行ったが、可決に必要な賛成票を得られず否決となった。
採決の対象となった投票権法案は、「投票の自由法案」と「ジョン・ルイス投票権促進法案」を一本化した。前者は、選挙日を連邦の祝日にするほか、全有権者が郵便投票用紙を請求できるよう定める。後者は、各州が投票方法に関する変更を行う場合、司法省からの事前承認を求める。共和党が知事・州議会を押さえている州で、投票方法を制限する法律が成立している動きに対抗すべく、ジョー・バイデン政権と議会民主党が推し進めてきた法案だ(バイデン米政権、ブラック ジャック)。しかし、上院採決では、党派ラインに沿って賛否が分かれ、賛成49票に対して反対51票との結果となった(注1)。
上院では、議事妨害に関するフィリバスター・ルール(注2)があるため、実質的に60票の賛成がなければ法案を可決できない。そこで、上院トップのチャック・シューマー院内総務(民主党、ニューヨーク州)は、本法案に限って同ルールの適用を停止する決議案を採決にかけた。これについては単純過半数の賛成があれば可決できたが、かねて同ルールの変更に反対していた民主党のジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)とキルステン・シネマ議員(アリゾナ州)が反対票を投じ、結局、賛成48票に対して反対52票で否決された。投票権法自体には賛成票を投じたマンチンおよびシネマ両議員も、フィリバスター・ルールについては簡単に手続きを変えるべきでないと反対に回った。これは中間選挙にも影響する法案で、政権と議会民主党にとっては痛手となった。
バイデン大統領は結果を受けて「非常に落胆した」と述べる一方、「わが政権はいかなる代償を払ってでも、民主主義の中核である投票権を守るための戦いを止めることはない」とし、「同志と共に必要な法案を前に進めていく」との声明を出している。シューマー院内総務も同様の声明を出すとともに、今回の採決でどの上院議員が投票権の保護を支持しているのかが明らかになったとし、この記録は上院民主党が民主主義を守る上での決意を強めるとしている。
(注1)民主党からはチャック・シューマー院内総務のみが反対票を投じたが、これはその後のフィリバスター・ルール変更に関する採決に必要な議事手続きだったため、実際の賛否は完全に党派ラインに沿った50対50となる。
(注2)上院では通常、法案可決にはフィリバスター(議事妨害)を抑え込むため、クローチャー(討論終結)決議に必要な60票の賛成が必要となる。
(磯部真一)
(米国)
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