イスラエルのベネット首相、UAEを初の公式訪問
(イスラエル、アラブ首長国連邦、イラン)
テルアビブ発
2021年12月15日
イスラエル首相府は12月13日、ナフタリ・ベネット首相がアラブ首長国連邦(UAE)を訪問し、ムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ首長国皇太子と会談を行ったと発表した。イスラエルの首相としてのUAEへの公式訪問は史上初となる。
同日付「ハアレツ」紙によれば、首脳会談は公邸で行われるのが通例なところ、アブダビの同皇太子の私邸で行われ、全体のうち約2時間半は同首相と同皇太子のみの会談となったという。会談の議題は、主に経済関係に焦点が置かれ、自由貿易協定の締結に向けた協議の促進に合意したほか、再生可能エネルギー分野の共同研究開発にも合意が及んだとしている。
会談では、イランの核開発やペルシャ湾における船舶への攻撃事案についても議論されたが、両首脳ともに会談後の共同声明にはこれを盛り込まず、イスラエルがUAEの対イラン外交に配慮したかたちとなった。
また、具体的な日程などは未定だが、同首相は、同皇太子のイスラエルへの公式訪問を招請した。さらに、UAEのノウラ・ビント・モハメド・アル・カアビ文化相とも会談し、イスラエルとUAEが共同出資するテレビ事業などについても意見交換を行ったとされる。
なお、同日付「ハアレツ」紙の別の記事では、UAEが直近にイランとの関係改善を図ったことから、11月29日からウィーンで再開されたイラン核合意「包括的共同行動計画(JCPOA)」再建のための合同委員会()の動きを牽制したいとされるイスラエルに対して、UAEが緊張緩和を求めた可能性を指摘している。
同記事では、UAEとイランとの関係改善の経緯にも触れている。2年前に両国間で、ペルシャ湾の船舶の安全を確保するための安全保障協力協定における合意がされていた。2021年11月にはUAE、イラン、トルコ間の合意により、UAEからトルコへ仕向けられる貨物のイラン領通過を認めていた。その後、イランのホセイン・アミール・アブドゥラヒヤーン外相が「UAEとわが国との関係において新たな葉が一枚めくられようとしている」と発言していたが、12月6日にはUAEのタフヌーン・ビン・ザーイド国家安全保障局顧問がテヘランでライーシー大統領らと会談し、両国の関係改善に向けて一致していた(2021年12月9日記事参照)。
(吉田暢)
(イスラエル、アラブ首長国連邦、イラン)
ビジネス短信 e3a6d4af0f165928