国連総会、バングラデシュのLDC卒業を決議
(バングラデシュ)
ダッカ発
2021年12月06日
国連は11月24日、第76回国連総会でバングラデシュ、ラオス、ネパール3カ国の後発開発途上国(LDC、注1)卒業の決議案を採択したことを発表した。
うち、バングラデシュは、2018年にLDC卒業資格の要件を満たし、2021年2月には2度目の審査(トリエンナーレ・レビュー)を経て、国連の開発政策委員会が2026年のLDC卒業を推薦していた(注2)。今般の採択により、同委員会によるモニタリングなど所定のプロセスを経て、2026年11月24日にLDC卒業見込みとなることが決定した(注3)。
バングラデシュは1975年のLDC認定以降、諸外国への輸出に際して、LDC向けの関税優遇措置を受けている。例えば、衣料品の日本向け輸出では、所定の条件を満たすことで特別特恵関税(原則無税)が適用されており、同ビジネスに携わる進出日系企業にとって大きな利点となっている。主要輸出先であるEUに対しても、優遇制度(Everything But Arms Initiative)による無税アクセスが供与されている。これら措置の対象は、原則としてLDC諸国に限定されている。他方、最大の輸出相手国であり、金額ベースで輸出全体の17.3%〔2019/20年度(2019年7月~2020年6月)〕を占める米国は、2013年4月に発生した縫製工場が入った商業ビルのラナプラザ崩落事故などを受け、同年6月以降、開発途上国向け関税優遇措置(GSP)の対象国からバングラデシュを除外している。
今回の国連決議に関して、現地報道は、LDC卒業に向けた準備の必要性、具体的には関税優遇措置の継続に向けたEUおよび英国との協議、輸出産業や投資誘致の多角化の重要性などに言及している。当地の進出日系企業とバングラデシュ地場企業で構成される日本・バングラデシュ商工会議所(JBCCI)事務局長のタレク・ラフィ・ブイヤン氏は「LDC卒業はバングラデシュにとって大きな節目であり、政府高官からも好意的な反応が多くみられる。今後、政府はブータンとの2国間の特恵貿易協定(PTA)に続く2国間経済連携協定(EPA)などの締結や、EUなどの関税優遇措置の延長に係る手続きなど大きな課題に着実に対処していく必要がある。移行期間が3年から5年に原則延長されたものの、政府がスピード感を持ってそれらを進められるかどうかがカギとなる」と指摘する。
(注1)LDCは、(1)1人当たり国民総所得(GNI)、(2)人的資源開発の程度を表す指標(Human assets index)、(3)外的ショックからの経済的脆弱(ぜいじゃく)性を表す指標(Economic and environmental vulnerability index)の各基準で、一定値に達しない国を対象とした国連の制度。
(注2)卒業の決議案の採択後、卒業まで3年間の移行措置が設けられることが原則だが、新型コロナウイルスによる影響からの回復期間を考慮し、例外的に移行期間が3年から5年に延長された。
(注3)同委員会による毎年のモニタリングや、2024年に再度予定されているトリエンナーレ・レビューでは、新型コロナウイルスによる経済への影響が精査され、さらなる移行期間の延長(2029年までの3年間)の必要性の有無なども検討される予定。
(山田和則)
(バングラデシュ)
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