新型コロナ禍で輸送コスト上昇、スエズ運河の通行料も値上げへ
(エジプト)
カイロ発
2021年12月21日
新型コロナウイルス感染拡大後の世界的なコンテナ不足や輸送コストの高止まりは、エジプトの貿易や製造業にも影響を与えている。ジェトロが在エジプト企業に尋ねたところ(12月上中旬)、「新型コロナ禍」前と比べ、輸出入にかかる輸送コストは上昇し、輸送時間にも遅延が生じているという。一方、12月に入り、改善の傾向も見られるとの回答もあった。各社の見方は以下のとおり。
○物流会社
世界的に輸送が滞っていたため、船会社によっては、一時期、輸送を引き受けられなかったこともある。また、「新型コロナ禍」による人材不足などの影響で、輸送コストは上昇傾向にある。通常、エジプトから日本向けの貨物はシンガポールなど1~2か所に寄港するが、経由港での混雑により到着時期がずれることもあった。
○商社
もともと運賃は上昇傾向にあったが、「新型コロナ禍」の前と比べ、現在は輸送費が約3倍に上昇している。商品の中には4年前と比べ、輸送費が約8倍となった商品もある。運賃が約2倍の上昇でおさまっているものもあり、条件により状況は異なる。
○製造業者
船便の遅延やコスト上昇により、急ぎで必要な部品の輸入には航空便を使う場合もある。同じように航空便を使う企業もおり、一時期は航空便も空きがなかった。また、世界的な輸送の遅延に加えて、エジプトにおける貨物輸送の遅延の一因として、2021年10月から運用が開始された新たな通関システムの導入()による混乱の影響もあった。
エジプト政府はスエズ運河通行料の値上げを公表
エジプト政府は重要な外貨収入であるスエズ運河収入の増加を狙っており、スエズ運河庁は2021年11月4日、スエズ運河の通行料を2022年2月から6%値上げすると公表した。スエズ運河は、アジアと欧州間を結ぶ船の多くが通過するため、輸送コストのさらなる上昇が懸念される。日本荷主協会によると、2020年には、同協会関係船1,012隻がスエズ運河を通航し、合計約391億円の通行料を支払った(1隻当たり約3,864万円)。スエズ運河の通行料が6%上昇した場合、約25億円の負担増になるという。なお、液化天然ガス(LNG)の運搬船やクルーズ船は、今回の通行料上昇の対象外となる。
(井澤壌士)
(エジプト)
ビジネス短信 190f5c2bdab86ee8