パルムラン大統領、COP26でカーボンオフセットのルール強化の必要性強調
(スイス)
ジュネーブ発
2021年11月17日
英国で開催されていた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が11月13日に閉幕したが、スイスのギー・パルムラン大統領は1日の首脳級会合の世界リーダーズサミットで演説。大統領は、山岳国スイスは地球温暖化に対して特に敏感であり、将来の世代が異常気象や熱波によって受ける影響は大きいとの危機感を示した上で、COP26では「1.5度目標の維持」「パリ協定の実施ルールの確定」「目標達成のための十分な財源の用意」の3点を達成することが必要と述べた。また、全ての国に対し2050年までのカーボンニュートラル達成を目指すよう訴え、目標達成に向けて必要となる短期的な行動目標として、2030年に向けた野心的な計画を立てることを奨励するとの見解を示した。
2点目の「パリ協定の実施ルールの確定」に関しては、カーボンオフセットにおける排出削減量の二重計上を避けるルールづくりが必要だと強調した。スイスは、カーボンオフセットの透明性の高いルール構築に注力しており、2020年10月にはペルーとの間でカーボンオフセットに関する2国間協定を締結した。パリ協定第6条2項では、国際的に移転したカーボンクレジットを排出削減目標に活用するに当たって環境保全と透明性を確保することと、計算で二重計上を回避することが定められているが、スイス・ペルー間の協定は、この条項の内容に基づいて合意された世界初の協定だ。その後、スイスはガーナやセネガル、ジョージアとも同様の協定を締結し、COP26の会期中にはバヌアツ、ドミニカ共和国とも同様の協定を結んだ。
シモネッタ・ソマルガ連邦環境・運輸・エネルギー・通信相は9日からCOP26に参加し、カーボンオフセットに関する明確なルール作りを推進するため、各国の環境相と交渉を進めた。14日に合意が採択されたことを受け、環境・運輸・エネルギー・通信省は、採択された内容に二重計上を避けるルールが取り入れられたことに関し、スイスの取り組みの成果だとした。加えて、温暖化対策のためのさらなる投資が必要との見解を示し、気候変動対策関連の複数の基金などに対し、5,000万スイス・フラン(約61億5,000万円、CHF、1CHF=約123円)以上を新たに拠出することを表明した。
(城倉ふみ、マリオ・マルケジニ)
(スイス)
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