2022年予算案、歳出は過去最高、新型コロナ終息後を見据えた経済回復に重点
(マレーシア)
クアラルンプール発
2021年11月05日
マレーシア政府は10月29日、2022年予算案を発表し、連邦議会下院に提出した。歳出総額は、前年比3.6%増の3,321億リンギ(約8兆9,667億円、1リンギ=約27円)で、2年連続で過去最高を記録した。予算案作成に当たり財務省は、1,100を超える覚書や5万件以上の提案を受領したとしている。
ポストコロナの回復に力点
歳出の内訳をみると、公務員給与や物品・サービス調達費などの一般歳出が前年比6.3%増の2,335億リンギ、公共投資を中心とした開発支出が21.9%増の756億リンギと増加した。一方、新型コロナウイルス特別措置法の下で設置された特別信託基金分は41.0%減と大幅に縮小し、230億リンギとなった(添付資料表参照)。歳入は5.9%増の2,340億リンギで、財政赤字のGDP比は、2021年の6.5%から2022年には6.0%へわずかに減少すると見込む。
2022年予算案についてザフルル・アブドゥル・アジズ財務相は、第12次マレーシア計画の下での持続的な経済回復に向け、「Keluarga Malaysia, Makmur Sejahtera(繁栄のマレーシア家族)」のスローガンの下、(1)経済回復の強化(注)、(2)強靭(きょうじん)性の確立、(3)改革の推進、の3本柱を掲げ、経済を成長軌道に戻す考えを示した。
例えば、企業向けの政策として、主力製造業である自動車産業においては、新車の売上税免税措置を2022年6月末日まで延長する。当初の期限は2020年末の予定だったが、これまでに2度延長されていた。さらに、電気自動車(EV)の関税、物品税、販売税などを免除し、EV産業の発展を目指す。
企業の事業運営に資する税制改革案も
今回の国家予算案には、企業の事業運営に関連する税制改正案も盛り込まれた。例えば、特別再投資控除の適用期間延長、欠損金の繰り越し期間の延長、法人税の予定納税額の課税年度11カ月目における修正承認、高利益を計上した企業に対する1年度限りのプロスペリティ税の導入、国外源泉所得に対する課税などが注目されている。
中でも、特別再投資控除の延長を歓迎する声は大きい。特別再投資控除は、製造業や一部農業の適格資本的支出に対し60%相当額の所得控除枠が認められる制度だ。進出後、長期間が経過した企業においては15 年間の控除期間が満了するケースが多く、日本企業の声を踏まえ、マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)やジェトロも控除期間の延長を再三、政府に要望していた。今回の案では、戦略的投資を推進するための政策の一環として、この控除期間が2024 賦課年度まで延長される。こうした税制改革案に対しては、「新型コロナ禍」の状況下で企業負担の軽減に配慮したと全般的に評価されている。
(注)同時に発表された経済見通しにおいては、マレーシアの2021年のGDP成長率は3.0~4.0%、2022年は5.5~6.5%と予測されている。
(吾郷伊都子、エスター頼敏寧、関淑怡)
(マレーシア)
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