重要技術ブループリントを発表、まずは量子技術に投資
(オーストラリア)
シドニー発
2021年11月18日
オーストラリアのスコット・モリソン首相は11月17日、国益にとって重要な技術を保護し、かつ促進するための戦略として、「重要技術ブループリント(Blueprint for Critical Technologies)」とその行動計画を公表した。その中で定めた技術分野のうち、まずは量子技術の商用化や利活用を推進するため、1億1,100万オーストラリア・ドル(約94億3,500万円、豪ドル、1豪ドル=約85円)を投資する計画もあわせて発表した。
重要技術とは、経済的繁栄や社会的結束をもたらす一方で、国家安全保障上のリスクを悪化させる可能性のある、既存および新興のテクノロジーを指す。ブループリントおよび行動計画では、今後10年以内に重要性が高まると予測される8カテゴリー、63技術をリスト化し、そのうち最初に焦点を当てる9つの技術分野[重要鉱物の抽出・加工技術、第5世代/第6世代移動通信システム(5G/6G)を含む先端通信技術、人工知能(AI)、サイバーセキュリティ、ゲノミクス・遺伝子工学、新抗生物質・抗ウイルス剤・ワクチン、低排出の代替燃料、量子技術、自動運転・ドローン・ロボット]を定めた。
量子技術への投資に当たっては、オーストラリアの企業が新たな市場や投資家にアクセスするのを支援するため、7,000万豪ドルを投じて「量子商業化ハブ」を設置し、有志国との戦略的パートナーシップを促進する。ハブの設置に向け、産業界と政府の取り組みを調整し、より多くの民間投資を呼び込むため、国家量子戦略の策定に着手する。連邦政府は、量子技術の商用化によって2040年までに40億豪ドルの経済価値と1万6,000人の雇用を創出できると見込んでいる。
モリソン首相は、「AUKUS(注1)やQUAD(クアッド)(注2)で取り組んでいるように、サイバーセキュリティやAI、量子技術などの高度で重要な技術における協力を強化するものだ」と強調した。
(注1)米国、英国、オーストラリアが2021年9月に発表した新たな安全保障協力の枠組み。
(注2)日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国がインド太平洋におけるルールに基づく秩序を維持・強化するという共通のコミットメントの下、安全保障や経済を協議する枠組み。
(住裕美)
(オーストラリア)
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