カステックス首相、26億ユーロの若年者ニート向け就労支援策を発表

(フランス)

パリ発

2021年11月11日

フランスのジャン・カステックス首相は11月2日、総額26億ユーロの若年層向け就労支援策「若者就労促進契約(Contrat d’Engagement Jeunes外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。2022年に40万人の若者の就労につなげることを目指す。

具体的には、長期にわたって就学、就労しておらず、職業訓練も受けていない26歳未満の「ニート」を対象に、就労に努力すると誓約することを条件に、12カ月(特定の条件下では18カ月)を上限に、所得に応じて月額500ユーロまで支給する。支給額は、非課税世帯や税務上独立している若年者の場合は500ユーロ、課税所得が第1段階(2021年は1万84ユーロ~2万5,710ユーロ)の場合は300ユーロとなる。

受益者は、日本のハローワークに相当するポールアンプロワ、または若年者向け雇用支援機関のミッション・ローカルと契約し、週に15~20時間の研修や実習、見習いなどを義務付ける。フォローアップやアドバイザーとの連絡は携帯用アプリを活用し、担当アドバイザーが契約期間中に月2~4回の面接を行い、各自の希望に沿った就労支援を行う。2022年3月から運用を開始する。

現在、フランスでは若者の5人に1人が失業中で、約100万人のニートがいる。そのうち50万人は、学校制度からの落ちこぼれや就労へのつまずきといったさまざまな理由で、経済の回復にもかかわらず、長期にわたり「ニート」の状態となっている。カステックス首相は「全ての人が経済回復の利益を享受するべきであり、強い回復力を見せる今、就労が困難な若者に対処し、彼らに向けた措置を強化し、彼らに適応させることが喫緊の義務」とした。

この同措置の財源は、2022年6月まで延長され2022年の予算案に54億ユーロ計上されている若年者雇用促進策()から20億5,000万ユーロを充て、新たに5億5,000万ユーロを修正案で追加し、26億ユーロを確保する。

政府はニートへの就労支援策導入を2021年初頭から検討していたが、内容を固めるのに苦慮した末に、予算削減のために、対象者を当初案の全てのニートから最終的には長期間のニートに絞った。対象者数の激減に失望の声も散見され、最大労組のフランス民主労働総同盟(CFDT)は11月2日、「若年層向け支援の第一歩だが、まだ全員に対する支援ではない。今回の措置が実際にどのように適用されるか注意深く見守る一方、より野心的な措置である30歳未満の若者全員への長期雇用に向けた支援措置の創設へ活動を継続する」との声明を発表した。

(奥山直子)

(フランス)

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