地場スタートアップ、食品廃棄問題に取り組む
(インドネシア)
ジャカルタ発
2021年11月10日
ジェトロは11月1日、インドネシアで課題となっている食品ロス・廃棄(FLW)(注)の改善に取り組む同国のスタートアップ、サープラス(Surplus)の最高経営責任者(CEO)アグン・サプトラ氏にヒアリングを行った。インドネシア国家計画開発庁(バペナス)が2021年7月にFLWに関する報告書によると、インドネシアでは2000年から2019年までの20年間において、1年当たり約2,300万~4,800万トンのFLWが発生した。金額に換算すると、213兆~551兆ルピア(約1兆6,827億円~4兆3,529億円、1ルピア=約0.0079円)にのぼる。同国ではFLWのうち、食品廃棄の割合が増えており、2010年では全体の約39%だったのに対し、2019年には約55%となっている。
(問)ビジネスモデルについて。
(答)創業は2019年。当社と提携するレストランは、閉店1時間ほど前から、余りそうな食品を、アプリを通して出品が可能。販売価格は定価の約50%。レストラン側は収益の約10%を当社に還元する。消費者は、アプリ使用料として約2,000ルピアを当社に支払う。サービスを開始してからの1年半で、5,000種以上の食品(約1億トン)を扱い、金額は1万2,000ドルにのぼる。
(問)「新型コロナ禍」の影響について。
(答)従来、レストランの閉店時間は午後10時ごろだったが、社会制限により午後6時となった時期もあった。これにより、夕食として当社のサービスを利用する人が増え、2021年の取引量は、前年同期比で2倍から3倍となっている。
(問)事業拡大に際し課題になっていることは何か。
(答)食品廃棄に関する人々の意識の低さだ。食品廃棄に関しては、政府の規制が存在しない。当社のサービスを使うことで、環境面だけでなく経済的メリットがあることをレストランの従業員に教育していくことが重要。また、現在、サービスを展開しているのはジャカルタ首都圏、バンドゥン市、ジョグジャカルタ特別州、マラン(東ジャワ州)などと限定されている。都市の選定については様々な視点があるが、有名な大学があり、教育された人が多いことが重要な要素となる。バリも有望な候補だ。現在はレストランだけでなく、スーパーマーケットにもアプローチしている。
(問)外国企業などとの連携について。
(答)2021年9月にシンガポールの銀行DBSと連携し、医療従事者や新型コロナウイルスの患者に食品を提供した(DBSウェブサイト)。日本企業との連携について、出資受け入れはもちろんのこと、日本食レストランとも提携したい。
(注)同報告書では、食品の生産、保管、加工やパッケージング過程で発生したものを「食品ロス」、販売や消費過程で発生したものを「食品廃棄物」とする。
(上野渉、シファ・ファウジア)
(インドネシア)
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