ロシア政府、2060年までにカーボンニュートラル達成を発表
(ロシア)
モスクワ発
2021年11月10日
ロシア政府は11月1日、2050年までの温室効果ガス排出削減を伴う社会経済発展戦略(2021年10月29日付連邦政府指示第3052-r号)を発表した。政府は2050年までに、森林などによる吸収量を差し引いた温室効果ガスの純排出量を2019年比で約60%削減し(添付資料表参照)、2060年までにカーボンニュートラルを達成する計画だ。
政府が実現を目指すシナリオ(注1)によると、2050年の温室効果ガス純排出量を2019年比で60%減とし、その後も政策を継続することで2060年にカーボンニュートラルを達成する計画だ。実現のため、製品認証に関する技術規則の見直し、財政・税制上の措置を講じるとした。例えば、カーボンプライシング(注2)、エネルギー効率の高い技術の導入支援、グリーンプロジェクト(注3)に対する融資の優遇などが挙げられた。今後6カ月以内に、経済発展省が具体的な行動計画を取りまとめる。
シナリオ実現の効果として、世界的なエネルギー移行の影響を受けて資源輸出が減少するものの、非資源輸出の増加がこれを補うとともに、国内投資が活性化することで、2031年~2050年の経済成長率を平均3%確保する。このほか、技術水準の向上とロシア経済の競争力強化、水素燃料や電気自動車といった新産業の創出、可処分所得の増加などプラスの効果があるとした。
ロシア科学アカデミー国民経済研究所のアレクサンドル・シロフ所長は「ベドモスチ」紙(11月8日)に寄せた論文の中で、「戦略は国や経済界、温室効果ガス削減で異なる立場を取るさまざまな専門家コミュニティとの間で折り合った結果だ」と述べた。目標実現に当たっては、有望技術の開発や生態系による温室効果ガス吸収などに関する基礎科学研究の貢献が不可欠と主張した。
(注1)戦略内で設定され、政府が採用した目標シナリオを指す。戦略ではほかに、現状維持シナリオでの推計も挙げられている。
(注2)二酸化炭素(CO2)排出に対して価格付けし、市場メカニズムを通じて排出を抑制する仕組み。例えば、炭素税や排出権取引制度がある。
(注3)地球温暖化など環境問題の解決に貢献する事業。ロシア政府は2021年7月14日付連邦政府指示第1912-r号、9月21日付連邦政府決定第1587号でグリーンプロジェクトの定義を設けている。ロシアの定義では、原子力もこれに含まれる。
(浅元薫哉)
(ロシア)
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