業界7位のエネルギー小売事業者バルブ・エナジーが経営破綻
(英国)
ロンドン発
2021年11月26日
英国では、9月からのガス価格高騰の影響でエネルギー小売事業者(以下、小売事業者)の経営破綻が相次いでいる。小売業界で7位のシェアを持つバルブ・エナジーは11月22日、ガス価格高騰の影響を受け、経営破綻したことを発表した。同社は、約170万軒(注)の顧客に電気・ガスの供給を行っており、2021年に経営破綻した小売事業者の中では、最大の顧客数となった。11月は同社以外にも、既に小規模小売事業者8社が経営破綻している。2021年に入り計25社が経営破綻に追い込まれ、計420万軒(家庭用・非家庭用を含む)以上に影響が出ている(添付資料参照、)。
英国政府は同22日、同社の顧客保護について、政府とガス・電力市場局(Ofgem、エネルギー部門の規制機関)の方針を発表。Ofgemは政府の同意を得て、バルブ・エナジーの運営を継続するために、同社を「特別管理制度(Special Administration Regime)」の下に置くことを裁判所に申請し、裁判所は同制度を許可するとともに、そのために必要なエネルギー管理者を任命した。政府は24日、バルブ・エナジーが「特別管理制度」の下、運営されることを発表している。任命されたエネルギー管理者は、同社の救済、売却、顧客の譲渡によって管理を終了することが可能になるまで、最も低い合理的かつ実現可能なコストで、顧客へエネルギーを供給する。同制度は、大規模小売事業者が経営破綻し、Ofgemが顧客を引き継ぐ新たな小売事業者を選任できない場合に、顧客保護のために適用される。これにより政府は、同社に資金や融資を提供することができるようになる。同制度は、2011年に導入されたものの、適用は今回が初めて。
バルブ・エナジーは同日、同社ウェブサイトで、「(エネルギーの)卸売価格が急騰し、現在も非常に不安定な状態が続いている。われわれは、顧客を保護するエネルギー価格の上限(Energy Price Cap)設定を支持してきたが、現在のエネルギー価格の上限は、エネルギーコストを大幅に下回る水準に設定されている。業界では、冬の間、さらに多くの小売事業者が破綻することが予想されている」とコメントした。
エネルギー価格の上限見直しについて意見公募を実施
Ofgemは11月19日、エネルギー価格の上限に小売事業者が直面するコスト、リスク、および不確実性を確実に反映させる提案について意見公募を開始した。期限は12月17日までで、一部を除き2022年2月初旬までに決定事項を公表する予定。Ofgemの提案には、例外的(まれであり、緊急に対応しなければ大きな影響を及ぼす)な状況が発生した場合に、Ofgemが年2回(4月、10月)の上限価格の見直し時期以外でも、上限価格を修正できるようにすることが盛り込まれている。なお、現在の価格上限は、10月から適用されているが、8月に上限価格が公表されたため、9月以降のガス価格高騰が反映されていない。次回の上限価格の見直しは2022年4月を予定している。
(注)同社は、2021年第2四半期時点で、電力供給市場シェア5.5%、ガス供給市場シェア4.9%だった。
(宮口祐貴)
(英国)
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