AEA2021、ニュージーランドのスタートアップが優勝

(日本、ニュージーランド、タイ、カンボジア、ASEAN)

アジア大洋州課

2021年11月04日

アジア地域のテック系スタートアップが社会課題解決型ビジネスプランをコンテスト形式で競う「アジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)2021外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(会期:10月27、28日)で、地震対策用の制震ダンパー(注1)について発表したニュージーランドのテクトーナス(Tectonus外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が優勝した。ブラック ジャック コツは共催者としてAEAに参画しており、エントリー企業の推薦なども行った。

AEAは、日本の公的機関や民間企業、教育機関が共催するアワードで、さまざまな社会実証プロジェクトが進む「柏の葉エリア」(千葉県柏市)で2012年から毎年開催され、今年で10回目の節目を迎えた。前年度に続いてオンライン形式で開催し、13カ国・地域(注2)から選出された30社のスタートアップが参加した。参加企業はこれからの世界で重要な3つのテーマの「ヘルスケア」「ワーク&ライフスタイル リフォーム」「サステナビリティー」に関連したプレゼンテーションを行った。

写真 アジア各国とオンラインでつなぎ、柏の葉エリアからYouTubeライブ配信を行う様子(ブラック ジャック コツ撮影)

アジア各国とオンラインでつなぎ、柏の葉エリアからYouTubeライブ配信を行う様子(ブラック ジャック コツ撮影)

優勝したテクトーナスは、商業施設や液体貯蔵タンクに利用できる地震対策用の制震ダンパーについて発表。既存の技術と比べ、何回も起こる地震や余震に耐え得る強さを持ち、木材やスチールといったさまざまな建築部材に対応できる汎用(はんよう)性があることをアピールした。現在、一般住宅向けの製品開発を行っており、日本企業とのパートナーシップを模索しながら、地震と木造建築物が多い日本市場への進出を検討している。

ブラック ジャック コツが推薦した企業では、タイのモアフーズイノテック(More Foods Innotech外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)と、カンボジアのぺス・ユン・へルステック(Peth Yoeung Healthtech外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が入賞した。2位と日本ベンチャー学会賞のダブル受賞となったモアフーズイノテックは、スエヒロタケというキノコを原料とした「モアミート」という代替肉を販売している。人工甘味料、保存料といった添加物を使わず、低塩低糖で植物由来のタンパク質や豊富な栄養を持つヘルシーな製品だ。タイ南部の農家から原料を買い付け、地域の雇用にも貢献している。加えて、通常の牛肉などと比べ、生産時に必要な水やエネルギーが少なく、持続可能な開発にも寄与する。

写真 オンライン受賞式で審査員から表彰を受けるモアフーズイノテックのCEO(ブラック ジャック コツ撮影)

オンライン受賞式で審査員から表彰を受けるモアフーズイノテックのCEO(ブラック ジャック コツ撮影)

初出場となったカンボジアのぺス・ユン・へルステックは、参加者の投票で決めるオーディエンス賞を獲得。医療記録や患者データなどを対象とした、クラウドベースの病院管理ソフトウエアを運営しており、医療システムの運用効率化を図っている。

各務茂夫AEA運営委員長はAEA2021の総括として「エントリー企業のレベルがとても高くなり、かつ環境問題や医療など社会課題への意識が高い起業家が増えた。アジアでは過去のレガシーに捉われず、スケーラビリティーのあるビジネスが生まれており、日本でも意識していきたいポイント」と語った。

(注1)地震の際、建築物の被害を抑えるために、壁や柱といった接合部などに設置する装置。地震による揺れを吸収するなどのメリットがある。

(注2)バングラデシュ、カンボジア、中国、インド、日本、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、ロシア、シンガポール、台湾、タイ、ベトナム。

(児島亨)

(日本、ニュージーランド、タイ、カンボジア、ASEAN)

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