送電業者RTE、脱炭素に向け原発新設を提示
(フランス)
パリ発
2021年11月02日
フランスの送電系統管理会社RTEは10月25日、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた6つの電源構成シナリオを比較した調査報告書「エネルギー未来2050」を公表した。カーボンニュートラルの実現には再生可能エネルギーの大幅な導入が欠かせないとする一方、電力の安定供給を確保しつつ、より安いコストで確実に目標を達成するためには、欧州加圧水型炉(EPR)の新設が必要になるとの見解を示した。
報告書は、化石燃料への依存度を低減させる過程で、2050年の電力消費量は645テラワット時(TWh)と今後30年で35%増加するとの予測を基に、経済性や技術面などから、以下6つの電源構成シナリオの実現可能性を検証した。
- 再生可能エネルギー100%
- 再生可能エネルギー87%(太陽光発電36%)、原子力13%(既存原発)
- 再生可能エネルギー87%(地上風力発電32%)、原子力13%(既存原発)
- 再生可能エネルギー74%、原子力26%(8基のEPR新設)
- 再生可能エネルギー64%、原子力36%(14基のEPR新設)
- 再生可能エネルギー50%、原子力50%(14基のEPR、小型モジュール炉の建設)
各電源構成シナリオの経済性についてRTEは、発電コストに系統安定化費用を加えた総合コストを試算した。これによると、2060年時点での年間総合コストは(1)770億ユーロ、(2)800億ユーロ、(3)710億ユーロ、(4)660億ユーロ、(5)610億ユーロ、(6)590億ユーロだった。再生可能エネルギーに依存する電源構成で、特に小型の太陽光発電施設を大量に導入するシナリオ(2)のコストが最も高く、原発依存度が高くなるほど統合コストは低下する結果となった。
技術面では、原発依存度を50%とする電源構成シナリオ(6)について、14基のEPR建設に加え、小型モジュール炉の開発・建設と、既存原発の60年を超える運転期間の延長が必要になることから、実現に向けた技術的ハードルが高いと指摘した。その上で、RTEは、原発依存度を36%に抑え、再生可能エネルギーの割合を64%まで引き上げる電源構成(5)がより確実にカーボンニュートラルを実現できるシナリオだと説明した。
「エネルギー未来2050」は政府の要請を受けて策定されたもの。エマニュエル・マクロン大統領は同報告書の調査結果を踏まえ、2021年末までにEPR建設について決定を下すものとみられる。
(山崎あき)
(フランス)
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