米カーギルがカカオ加工工場の拡張工事を完了

(コートジボワール)

アビジャン発

2021年11月19日

米国カーギル・グループは11月2日、コートジボワール・アビジャン市内のヨプゴン工業団地にあるカカオ加工工場に、生産能力6万トン規模の生産ラインを新設し、開所式を行った。工場の拡張により、同社のコートジボワール国内でのカカオ磨砕能力は、17万トンに拡大する。総工費は1億ドルと見積もられる。

カーギル・ココア・ヨーロッパのNiels Boetjeマネージング・ディレクターは「東欧、中東、アフリカを中心に需要が高まる高カカオパウダーを製造する。最新技術を備えた工場により、顧客のニーズに応えた製品を供給できる」と述べた。

工場の開所式に参列したパトリック・アシ首相は、アフリカ最大の生産規模となるカカオ磨砕工場の建設により、コートジボワールの重点施策である農産品の現地加工率向上と雇用創出に寄与すると称賛した。世界最大のカカオ生産国であるコートジボワールでは、カカオ分野は主要な外貨獲得源で、GDPの20%、輸出収入の40%を占めている。

同社の工場拡張は、2019年にスイスのバリー・カレボーの子会社SACOが生産能力4万トンの生産ラインを新設したことに続く。コートジボワールのカカオ磨砕量、磨砕能力は現在、それぞれ62万トン、85万トンとオランダを抜き世界最大だ。国内の主要事業者は、SACO、カーギル、オラム(シンガポール)、セモア(フランス)と続き、これら大手外資企業による磨砕量が地場企業を含めた全体の8~9割を占めている。

カーギルは、1998年にコートジボワールに進出し、カカオ豆取引では同国最大だ。アビジャンのほか、サンペドロ、ダロアに加工工場を展開しており、合わせて870人を雇用している。同社は、持続可能なカカオ調達サプライチェーン構築イニシアチブ「Cargill Cocoa Promise」を導入し、長期的なカカオ農家やコミュニティ支援を通じて、国連持続可能な開発目標(SDGs)の達成に寄与する活動を展開している。同プログラムの一環として、今収穫年度(2021年10月~2022年9月)に1,300万ドルを投入する計画。

コートジボワールのカカオ生産量はここ数年にわたり、200万トン超で推移しており、世界総生産量の約4割を占めている。一方、現地加工率はいまだ30%と低く、政府は、国際市況の変動に左右されない所得安定化のため、2030年には100%にまで引き上げる目標を立てており、事業者に対し税制などの優遇措置を拡大している。アシ首相は、1,050億ドルを超える規模の世界カカオ産業のうち、カカオ農家の所得がわずか5~6%を占めるにすぎないとして、生産者の利益が極めて少ない現状に言及した。

(渡辺久美子)

(コートジボワール)

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