イタリアが議長国を務めたG20サミット会合が閉幕、ドラギ首相は「成功」と評価
(イタリア)
ミラノ発
2021年11月04日
イタリアが議長国を務めたG20サミット会合が、10月30~31日の日程で開催された。岸田文雄首相がオンライン出席した日本など一部の国を除く各国の首脳がローマを訪れ、「世界経済と保健」「気候変動と環境」「持続可能な開発」などについて議論が交わした。
10月30日の開会あいさつで、イタリアのマリオ・ドラギ首相は、新型コロナウイルス感染拡大を含む全ての課題に取り組めば取り組むほど、多国間主義の重要性がより明確になる旨を述べた。「新型コロナ禍」からの復興が進んでいる一方で、ワクチン接種の進捗は高所得国と低所得国で大きな開きがみられることにも言及し、より公正な復興を促進するための協調した取り組みの重要性を唱えた。
2日間の日程を経て、サミット会合は幕を閉じた。採択された首脳宣言は、「産業革命前と比較して気温上昇を1.5度以内に抑える努力を続けること」「新型コロナのワクチン接種率を、全ての国で2021年末までに40%、2022年半ばまでに70%まで到達させること」などの内容を含む。ドラギ首相は会合終了後の11月1日、今回の合意を「成功」とし、「近年はG20各国が協働して動く能力が低下していたが、このサミットで何かが変わった」と評した。
今回のG20について、イタリアの主要紙「イルソーレ24オーレ」(11月1日)は、(ドラギ首相が評したところの)「成功」は首相自身によるものだとし、「同盟国のみならず敵対する立場にある国にも耳を傾け、複雑な状況をコントロールする政治的能力を示した」とし、同氏の指導力を肯定的に評価した。
一方、具体的な成果については、課題も指摘される。イタリアのシンクタンク国際政治研究所(ISPI)は10月31日、「今回のG20は何を残すか?」と題する記事を発表。例えば気候変動対策について、G20は本分野において各国に拘束力をもたらすような決断をする場ではないとしながらも、英国で10月31日から11月12日まで開催される国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の直前にG20サミット会合が行われたこともあり、COP26での作業を容易にするような政治的合意に至ることが期待されていたと指摘。しかし、国家間の利害が対立し、この点については部分的なものに終わった、とした。最低法人税率を15%に設定することへの合意などは1つの成果とした。
次回2022年のG20は、インドネシアで開催される予定だ。引き続き、加盟国間の協調に注目が集まる。
(山崎杏奈)
(イタリア)
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