シンガポールのスタートアップ、北九州市でのバス運行ダイヤ効率化の実証実験を開始へ

(シンガポール、福岡)

北九州発

2021年10月26日

北九州市は10月22日、同市内の社会課題の解決に資する取り組みを支援する「スタートアップSDGsイノベーショントライアル事業(実証支援事業)」に、シンガポールに本社を置くSWAT Mobility Japan(以下SWAT、注)を採択したと発表した。今回採択された企業としては、唯一の外資系企業となる。今後、SWATは自社の開発したルーティングアルゴリズムを活用し、北九州市営バスのダイヤ効率化に向けた実証実験を行う。同市では市営バスを運行しているが、人口の減少や高齢化の進行などにより、利用者は減少しており、乗合バス事業も減収の一途をたどっている。特に同市若松区北西部地域は、広大な地域に集落が点在している上、バス利用者が少なく、不採算路線の維持が課題となっていた。

北九州市は2020年7月に、内閣府の「スタートアップ・エコシステム推進拠点都市」に選定されたことを受け、スタートアップのビジネスモデル実証費用の一部を補助する実証支援事業を2021年度から新たに整備した。同市内の社会課題の解決や市民生活の質の向上、産業振興やイノベーション創出に資する取り組みを公募し、実証フィールドを提供することで、地方都市ならではのスタートアップ・エコシステムの形成と発展を加速したい考えだ。北九州市スタートアップ推進課の岡本芳郎係長はジェトロに対し、「課題先進国といわれる日本だが、本市においては少子高齢化・人口減少が重要な課題だ。実証実験を通じて継続的なビジネスを行うきっかけをつかんでもらいたい。また、本市が目指す『ビジネスによるSDGs未来都市の実現』への貢献に期待している」と話した。

全国的にも乗合バスの利用者が減少する中、SWATはルーティングアルゴリズムを活用した北九州市でのバス運行ダイヤ最適化ソリューションの実証を基に、他地域へのサービス拡大を狙う。SWAT Mobility Japanの末廣将志代表取締役はジェトロに対し、「日本の社会課題である人口減少や人口流出は、特に地方で深刻化している。私たちの持つテクノロジーで日本の交通課題を解決できると考えた。北九州市の魅力は、政令指定都市で人口も多く実証データを集めやすいことと、大企業が多く立地しておりコラボレーションの機会が多いこと。加えて、北九州市はスタートアップへの受け入れ態勢が整っていて非常に協力的だった」と話した。

(注)SWATは、2015年にシンガポールで創業したモビリティスタートアップ。最少の車両台数で、複数の乗客を効率良く相乗りさせる高精度のルーティングアルゴリズムを開発した。オンデマンドバスアプリを2021年10月現在、世界7カ国(シンガポール、日本、フィリピン、タイ、ベトナム、インドネシア、オーストラリア)で展開する。2020年にオンライン カジノ ブラック ジャック対日投資支援を受け、東京都内に日本法人を設立した。

(葛西泰介)

(シンガポール、福岡)

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