2021年の米国年末商戦の小売売上高、過去最高を記録する見通し
(米国)
ニューヨーク発
2021年10月29日
全米小売業協会(NRF)は10月27日、2021年の年末商戦期間(11~12月)の小売売上高(自動車ディーラー、ガソリンスタンド、レストランを除く)が前年同期比8.5~10.5%増の8,434億~8,590億ドルになるとの見通しを発表した。伸び率は直近5年間の平均(4.4%増)を上回り、過去最高の売上高を記録する見通しになっている。
特に、ネット販売を含む無店舗小売りは前年同期比11~15%増の2,183億~2,262億ドルと、2020年の1,967億ドルを上回ると予想する。2020年に続き、ネット販売は重要になるが、店舗での買い物も増え、伝統的な年末商戦の購買体験を求める動きも強まるとみられる。
同期間の小売業者による臨時雇用者数は、2020年は48万6,000人だったが、2021年は50万~66万5,000人になると見込んでいる。
NRFのマシュー・シェイ会長兼最高経営責任者(CEO)は「所得が増加し、家計のバランスシートがかつてないほど健全なことから、消費者は今年後半の数カ月は非常に有利な立場にある」と述べた。新型コロナウイルスのパンデミックによる世界的なサプライチェーンの混乱などにより、2021年の年末商戦は商品不足や配達の遅延が生じる可能性があることが指摘されているが、同氏は、消費需要を満たすために小売業者がサプライチェーン対策に多額の資金を投資していることを評価し、楽観的な見通しを示した。
小売り各社は、サプライチェーンの混乱による品不足を避けることに加え、労働力不足にも直面しているため、買い物のピークを平準化させようと、年末商戦を前倒しする動きが進んでいる。アマゾンは10月4日から、11月末の大型セール「ブラックフライデー」と同様の値引きセールを開始し、ウォルマートやターゲットなども早期にセールイベントを実施した。新型コロナウイルス感染拡大以前から、年末商戦の前倒しは既に進んでいたが、パンデミックの影響で供給網の混乱が悪化したことでさらに後押しされた。
NRFが実施したアンケート調査(注)によると、消費者の半数(49%)は11月の前からホリデーショッピングを開始するとした。これは2020年(42%)を上回り、同調査開始以来最高の水準となった。また、サプライチェーンの課題が意識され、回答者の約半数(47%)が商品を見つけづらい状況を懸念している。港湾やトラック運送会社、物流倉庫などでの人手が足りておらず、消費者もその影響による商品不足を実感する場面が増えてきている。米国アドビ・アナリティクスによると、年末商戦シーズンに向け、小売店のウェブサイトに掲載される在庫切れのメッセージは、パンデミック発生前(2020年1月)と比べ2.7倍に増えている。新型コロナウイルスがまだ収束しない中、小売業者が抱える多くの課題が年末商戦にどう影響を与えるか注目される。
(注)調査は10月1~10日に米国の消費者7,921人を対象に行われた。
(樫葉さくら)
(米国)
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