原材料価格高騰や半導体需要増の影響広がる
(インドネシア、マレーシア、タイ、中国)
ジャカルタ発
2021年10月25日
新型コロナウイルス感染対策の緩和を受けて経済活動再開を進める在インドネシアの日系製造業企業が、原材料価格や輸送費の高騰、半導体の急激な需要増加などの影響を受けている。具体的な影響について、ジェトロは10月5日から15日にかけて、ヒアリングを行った。
輸送用機器関連製造業のA社は「中国の石炭価格高騰や停電問題などを受け、中国産の原材料価格が高騰している」とした上で、「原材料となるアルミニウム合金の単価が2021年初めから18%ほど上昇した。今後さらなる上昇が懸念されるため、12月の販売単価は11月になるまで決められない」とコメントした。中国では、世界的なエネルギー価格の高騰により、電力や石炭の国内供給が不足し、一部地域で電力供給が制限されている(関連実写 版 ブラック ジャック)。一方で、マレーシアでの新型コロナウイルス感染拡大により、マレーシアから同社への部品納入が一時期止まっていたが、現在は通常どおりという。
電気機器製造業のB社は、アルミや銅を含有する部品の価格高騰を指摘した。さらに、同社は完成品をタイから輸入するが、海上輸送の需要増加により船腹予約が困難になっていることや、海上輸送費の高騰により「一時期はコンテナ輸送費が通常と比べ3倍になった」とした。同社によると、タイのサプライヤーは感染拡大の影響によって生産が停滞していたが、現在の稼働率は平常時の8割程度で、徐々に平常化しつつあるという。サプライヤー多元化の必要性について問うたところ、「過去に発生した事案では、代替部品を用いたところ、後になって品質上の問題が発生した経験がある」とし、「現在はサプライヤーとの契約時に品質検査を厳格に行っているため、新規のサプライヤーを探すのは簡単ではない」としている。
電気・電子製造業のC社は、基板実装に必要な基板やコンデンサーが半導体の需要増加のため入手しにくい状況だと話した。また、以前は完成品を航空輸送していたが、航空輸送費が高騰し、海上輸送に切り替えたところ、これもコストがかさんだ。同社としては直近で最も大きな問題とのことだ。
半導体不足は市民生活にも影響
中国のスマートフォン・IT機器大手の小米科技(シャオミ)のインドネシア法人は10月11日、半導体を含めた部品不足の影響により、インドネシアで販売する一部のスマートフォンの値上げをSNS上で発表した。また、IT専門調査会社IDCの上級市場アナリスト、スタローン・ハンゲワ氏は「半導体を含む部品不足のため、インドネシアに輸入されるパソコンの数量が減少しており、価格上昇が懸念される」と指摘する(「CNNインドネシア」10月14日)。貿易統計データベースのグローバル・トレード・アトラスによると、インドネシアに輸入されるパソコン(HSコード847130~49)の数量は、2019年は1,738万台だが、2020年は約1,183万台と、前年比で約32%減少している。
(上野渉、シファ・ファウジア)
(インドネシア、マレーシア、タイ、中国)
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