改善みられるもサプライチェーン途絶の影響懸念、ASEAN製造業
(ASEAN、ベトナム、マレーシア、タイ、インドネシア)
ジャカルタ発
2021年10月13日
IHS MARKITが10月1日にウェブサイトで発表したASEAN主要7カ国(注1)の2021年9月までの製造業購買担当者景気指数(PMI)をまとめたところ、製造業の操業制限などを実施しているベトナム、マレーシアなどは依然として景気後退の水準となった(注2)。一方、7月に新型コロナウイルス感染拡大のピークを迎えていたインドネシアでは、感染状況の落ち着きに伴い徐々に各種社会制限を解除、PMIも景気拡大水準となった。新規感染者数は多くの国で減少傾向にあるものの、世界的なサプライチェーンの混乱による原材料費の高騰など、製造業にとって不安要素も残る。
9月のPMIが景気拡大の判断目安となる50を下回ったのは、ベトナム(40.2.)、ミャンマー(41.1)、マレーシア(48.1)、タイ(48.9)だった(添付資料図参照)。ベトナムでは7月以降、ホーチミン市などの南部地域を中心に厳格な社会隔離措置が適用され、従業員の出社に制限が出ていた。工場の操業継続には、工場内の従業員泊まり込みが要請されるなど、稼働率の低下を招いた(規制の有無で、無料 ゲーム)。さらに、IHS MARKITの報告書では、移動制限や世界的なサプライチェーンの断絶が、投入物価格(原材料費など)の急激な上昇などを招いているとされている。マレーシアでは、8月後半には1日当たりの新規感染者数が2万人を超える日もあり、「国家回復計画」によって製造業の出勤率を制限していた。しかし、直近では感染者数は減少傾向にあり、併せてワクチン接種率の高まりとともに経済活動も再開しつつある。IHS MARKITエコノミストのクリス・ウィリアムソン氏は「直近の各種社会制限解除が経済回復の原動力になっている」とする一方で、「サプライチェーンの混乱による(原材料費などの)価格高騰で、製造業の回復は困難を伴う」とも指摘する。報告書によると、タイは国内需要の回復による生産量が増加するも、ベトナムやマレーシアや同様に投入物価格のインフレ圧力が強まっている。
インドネシアでは、感染が急拡大した7月、8月のPMIが50を下回ったが、9月は52.2と改善した。インドネシア財務省財政政策庁のフェブリオ・カカリブ長官は「新型コロナウイルス対策が迅速かつ効果的に実行されたことの表れ」とコメントした。
(注1)インドネシア、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ミャンマーの7カ国
(注2)製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫レベル、雇用状況、価格などの指数に一定のウエイトを掛けて算出する指数。0から100の間で変動し、50.0は「前月から横ばい」、50.0を超えると「前月比で改善や増加」を意味して景気拡大を示し、50.0未満は「前月比で悪化や減少」として景気減速を表す。
(上野渉)
(ASEAN、ベトナム、マレーシア、タイ、インドネシア)
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