中国の秦駐米大使、ブラック ジャック 攻略、ニューヨークで講演
(米国、中国)
ニューヨーク発
2021年09月07日
中国の秦剛駐米大使は8月31日、ニューヨークに本拠のある非営利団体、米中関係全国委員会で米中関係に関する講演を行った。2020年末に王毅・国務委員兼外交部長がアジア・ソサエティで行った講演()と同様、米国に対話と協力を呼び掛けつつ、中国の内政には干渉しないよう指摘する内容となっている。
秦大使は冒頭、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官が米中国交正常化に向けて訪中してから50周年を迎えたと指摘し、「米中はその間に国際的な戦略地図を変えて冷戦を終結させ、グローバル化を推進し、アジア太平洋に前例のない機会をもたらし、世界の平和と繁栄を大きく促進させた」と両国関係の重要性を強調した。しかし、トランプ前政権による過激な中国政策が両国関係に深刻な被害を及ぼし、それが続いていると指摘した(注1)。米国側には大きく3つの誤信がある〔(1)中国の狙いは米国に取って代わること、(2)米国は中国に力で対峙(たいじ)すれば新たな冷戦に勝利できる、(3)両国間の協力が競争と対立によって後退している〕として、それらはいずれも正しくないと否定した。
秦氏はその上で、両国は政治体制や文化、発展段階の違いがある中、相互の尊重に基づく平和な道を探るべきだとして、次の3点を見解として提示した。
- 両国は互いの譲れない一線を明確にし、互いを尊重すべき:台湾、香港、新疆、西蔵(チベット)、南シナ海に関する中国の主権・安全保障・発展上の利益を尊重し、内政干渉をやめ、中国の譲れない一線に抵触することや、それに挑戦することを回避するよう米国側に期待する。
- 両国は対話を維持し、相違点を管理すべき:中国は外交、経済、金融、法執行、軍に関する両国担当省庁との対話の強化と対話のメカニズム(注2)の再構築に前向きだ。
- 両国は関係阻害要因を除去し協力に焦点を絞るべき:気候変動への対応などから小さな成果を積み上げて簡単な問題から解決し、関係改善と協力拡大への糸口を見つけるべきだ。米国は新型コロナウイルス自体が敵だと認識し、その起源解明に関する政治工作はやめるべきだ。米議会が審議している「米国イノベーション・競争法案(S.1260)」と「米国グローバル・リーダーシップおよび関与保障法案(H.R.3524)」(注3)が成立した場合、それらは中米関係に深刻な打撃を与える。
秦大使は7月末に着任したばかりで、米中関係を主題とした対外的な講演は今回が初となる。講演の最後には「米国のさまざまな分野の人々との対話を活性化し、両国の懸け橋となって相互理解を促進し、より合理的で安定した、かつ管理可能で建設的な米中関係を築きたい」と意気込みを語った。
(注2)米中は2006年に両首脳間の合意に基づき「戦略経済対話(SED)」を設立。オバマ政権が発足した2009年以降は「戦略・経済対話(S&ED)」に衣替えして閣僚対話を継続していた。トランプ政権は2017年にS&EDを「外交・安全保障対話」「包括的経済対話」「法執行・サイバーセキュリティー対話」「社会・文化対話」の4つに分割して年次会合を予定していたが、いずれも1~2回の開催で立ち消えとなった。
(注3)いずれも中国との長期的な競争を念頭に提出された法案で、米台関係の強化、香港の民主化支援、新疆ウイグル自治区での強制労働への対応、米国内の半導体産業の振興のための支援や輸出管理、対内投資審査の強化などを含んだ包括的な内容となっている。
(磯部真一)
(米国、中国)
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