ベストスタートアップ100を発表、首位は植物由来肉の開発企業
(スイス)
ジュネーブ発
2021年09月22日
スイス最大のスタートアップ表彰イベント「スイス・スタートアップ・アワード」が9月8日に開催され、最も将来性の高いスタートアップ100社が表彰された。スイスを代表するスタートアップ支援機関であるベンチャーラボが主催するこのイベントは、スタートアップがスイスで認知される登竜門のような存在で、受賞したスタートアップには国内外の投資家や各界のオピニオンリーダーとの交流の場が用意される。
今回首位に立ったのは、100%植物由来の肉を開発するプランティドだ。黄色エンドウ豆、菜種油、水を原料とする同社の代替鶏肉は「押出成形」という方法で植物性タンパク質の構造を変化させ、動物の筋繊維のような繊維形状にすることによって作られる。生産工程で従来の鶏肉に比べて土地の使用面積を50%、水の消費量を50%、二酸化炭素(CO2)排出量を66%削減しており、製品に化学添加物や遺伝子組み換え原料などを一切使用していない。連邦経済省農業局によると、2020年のスイスでの代替肉の売上高は前年比49.4%増で、近年、市場が大きく拡大している。
2位のクティスは、やけどなどにより重度の傷を負った患者のための、健康な小片の皮膚から再生した皮膚移植片「denovoSkin」を開発している(2020年9月29日記事参照)。2021年5月には皮膚の95%に重度のやけどを負った小児患者の治療で同社の皮膚移植片が活用されたことが発表されるなど、医療現場で実用化が進んでいる。
3位の9Tラボは、炭素繊維複合材料の3Dプリンティング技術を開発している。同社は医療や航空宇宙、自動車などの産業向けに、低コストかつ容易に超軽量の部品を設計、大量生産することができる技術を提供している。
100位に入賞したスタートアップを分野別に見ると、バイオテック(19社)、ブラック クイーン ブラック ジャック通信技術(ICT、16社)、メドテック(13社、注)が多く、その他ではエンジニアリング、フィンテック、クリーンテックなど多様な分野が並ぶ。ベンチャーラボの共同マネジングディレクターであるステファン・スタイナー氏は「起業家の経歴、アイディア、出身地域などの多様性がスイスの高いイノベーション力を支えている。11回目を迎えたこのアワードの歴史で初めて、フードテックが1位を受賞した」と述べた。
ベンチャーキャピタルによるスイスのスタートアップへの投資は、2019年に過去最高額の22億9,400万スイス・フラン(約2,706億9,200万円、CHF、1CHF=約118円)を記録()。2020年にはやや減少したものの、新型コロナウイルス禍にもかかわらず、21億2,400万CHFを記録した。2021年は上半期の時点で既に17億CHFが投資されており、過去最高額を更新すると見込まれている。
(注)メディカル(医療)テクノロジー(技術)を組み合わせた造語で、ブラック クイーン ブラック ジャック通信技術を医療に活用する取り組みのこと。
(城倉ふみ)
(スイス)
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