バイデン米政権、CPTPP参加に依然慎重、中国の加入申請受け
(米国、中国)
ニューヨーク発
2021年09月21日
中国政府が9月16日に環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)への加入を正式に申請()したが、米国のバイデン政権は依然として、同協定への加入には慎重な姿勢を維持している。
ジェン・サキ大統領報道官は16日(米国時間)、ジョー・バイデン大統領は以前からTPPに再加入しないことを明らかにしているとした上で、「大統領は同時に、それら世界の40%(注)に入る必要があり、環境保護団体と労働組合を交渉に同席させることも明らかにしている。よって、それ(CPTPP加入)が実現可能な選択肢になるには、多くの段取りが見込まれる」と発言した。そのための条件として、再交渉の機会が設けられることも示唆した。また、インド太平洋地域との経済関係強化に向けては幅広い選択肢を検討しており、貿易のみが手段ではないとの考えを示した。中国のCPTPP加入については、加盟国の判断に任せるとした。米国通商代表部(USTR)報道官もその点を繰り返しつつ、「中国の非市場的な貿易慣行や他国への経済的な強制力の行使は、CPTPP加盟国が中国の加入を検討する上で考慮要素になるだろう」と付け加えている(通商専門誌「インサイドUSトレード」9月17日)。
議会からは政権の対応の遅さに危機感
連邦議会からは、米国がインド太平洋地域でリーダーシップを発揮するよう政権に求める声が相次いでいる。以前から政権に対してアジア太平洋における多国間の自由貿易協定(FTA)創設でリーダーシップを取るよう求めていた上院のトム・カーパー議員(民主党、デラウェア州)とジョン・コーニン議員(共和党、テキサス州)は9月20日、中国のCPTPP加入申請に触れた上で、「米国は待ち続けている余裕はない。われわれは通商面でアジア太平洋の同盟国に再び関与するために交渉の席を取り戻さなければならない」との声明を連名で出している。
そのほか、ベン・サス上院議員(共和党、ネブラスカ州)も「もし中国が太平洋において同盟関係を構築することに価値を見いだしているなら、なぜ米国はそうできないのか。(米国は)撤退するのではなく、リーダーの地位に戻るべきだ」と発言している(ブルームバーグ9月16日)。下院で通商を所管する歳入委員会で要職を務めてきたケビン・ブレイディ少数党筆頭委員(共和党、テキサス州)は「バイデン政権が、米国の労働者や家族、企業のために、貿易協定を拡大して新規市場を開拓することに無策な状況で、中国が米国を弱者と捉え、貿易協定で積極的な行動を取ることに驚きはない」と、通商交渉に消極的な政権の姿勢をやゆしている(政治専門誌「ポリティコ」9月17日)。
(注)米国が加入した場合に、CPTPP加盟国のGDPが世界全体に占める割合を指しているとみられる。
(磯部真一、藪恭兵)
(米国、中国)
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