欧州委、持続可能な開発をより重視したGSP改正案発表
(EU)
ブリュッセル発
2021年09月27日
欧州委員会は9月22日、現行の一般特恵関税(GSP)規則が2023年末に失効することから、その改正版となる規則案を発表した。今回の改正案は、欧州委が2月に発表した通商戦略(関連ブラック ジャック オンライン)に沿ったもので、貧困の撲滅や持続可能な開発の促進といった従来の目的を堅持しつつ、EUの利益擁護を重視するものだとしている。GSPとは、開発途上国に対して一定の枠内で特恵関税(輸入税の免除、または軽減)などの優遇措置を一方的に付与する制度だ。EUの場合、低所得国・下位中所得国を対象とする「標準的なGSP」と、持続可能な開発や人権などに関する国際条約を批准・順守するGSP対象国にさらなる特恵関税を付与する「GSPプラス」、後発開発途上国(LDC)を対象に武器以外の全ての製品の輸入関税を無税とし、輸入割り当ても行わない「武器以外の全て(EBA)」の3種類がある。
今回の改正案では、こうした制度枠組みは維持しつつ、EBAからGSPプラスへの移行の促進、セーフガード導入基準を輸入量から輸入額に変更、原産地規則で対象国の貿易や開発上のニーズに合わせた累積ルールの導入、競争力が十分にある特定製品について特恵関税の適用を除外する「品目別卒業」の基準値の引き下げなどの修正を提案している。
持続可能な開発目標(SDGs)や欧州グリーン・ディールへの対応を目指す
今回の改正案で特に注目されるのは、SDGsや欧州グリーン・ディールと関連して強化される部分だ。現行規則では特定の国際条約に対する重大で組織的な違反が認められる対象国に対して、特恵措置の付与を一時停止することができるが()、今回の改正案は、その一時停止の事由となる条約リストを拡大する。現行規則では、条約リストのうち一時停止の事由となり得るのは、主要な人権条約とILO条約の違反のみだが、改正案では条約リストに記載のある環境やグッドガバナンスに関する条約の違反も一時停止の事由となる。また、気候変動に関するパリ協定など6つの条約も、一時停止の事由となる条約リストに新たに追加する。GSPプラス対象国が引き続きGSPプラスの特恵関税を受けるためには、現行の条約リストに加えて、新たに追加される6つの条約も全て批准し、順守に向けて法的拘束力を持つ約束とともに、行動計画を提出することが求められる。さらに、特恵措置の迅速な一時停止を可能にする緊急手続きも導入する。緊急手続きは例外的に重大な違反の場合に限られるが、特恵措置の一時停止に必要な期間は、これまでの18カ月から7カ月に短縮される。
今回の改正案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議され、採択されれば、2024年1月から適用される。
(吉沼啓介)
(EU)
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