米税関、強制労働に基づくマレーシア企業からの輸入差し止め命令を撤回、改善を評価

(米国、マレーシア、中国)

ニューヨーク発

2021年09月17日

米国税関国境保護局(CBP)は9月9日、強制労働に基づき輸入を差し止める違反商品保留命令(WRO)の改定を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。それまで差し止め対象だった、マレーシアのトップ・グローブが現地で製造する使い捨て用手袋について、同社による改善が確認されたとして、輸入を解禁した。

改定の経緯について、CBPのトロイ・ミラー局長代行は「トップ・グローブが、マレーシアの工場において確認されたILO基準違反PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の全ての指標に対応したとの証拠を徹底的に検証した」と説明した。同社は、2020年7月にWROを受けた後、労働者に3,000万ドル以上を支払い、労働・生活環境の改善などを行ったという。同社工場では、借金による(労働者の)束縛や過剰な時間外労働、虐待的な労働・生活環境、身分証明書の取り上げなどがあったとCBPは指摘していた。ミラー局長代行は「CBPによる取り締まりが、サプライチェーンから強制労働を排除する経済的なインセンティブ(誘因)を与えた」と述べている。コビントン・バーリング法律事務所は、今回の発表がサプライチェーン上のリスク軽減を図る企業にとってのロードマップになると述べるとともに、CBPが強制労働の有無や改善の取り組みの程度を評価する際に、ILO基準を尺度としていた点に注目している。

バイデン政権は、中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害を通商政策の優先課題に挙げ、強制労働に基づく製品の輸入を一切認めない姿勢を強調している。政権発足後の2021年6月には、同自治区で製造される太陽光発電製品の一部がWROの対象に指定された(、注1)。CBP外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、WROに基づき差し止めた貨物の数は、直近10カ月(2020年10月~2021年7月)で1,125に上り、輸入額で4億1,300万ドルに相当するなど、過去数年と比べて大幅に増加傾向にある(注2)。

(注1)CBPは同指定後、WROの対象範囲や貨物が差し止められた際に用意すべき文書などに関するガイダンス(2021年9月9日更新)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公開している。ガイダンスでは、太陽光パネルなどの完成品に少量のWRO対象製品が含まれる場合、CBPが一義的に差し止めるか否かの判断を行うとする一方、事案によっては米裁判所の判断に委ねられる可能性が示唆されている。

(注2)米国における人権関連法・規制や、サプライチェーンに関わる規制の運用、実務上の対応などについては、地域・分析レポート参照。

(藪恭兵)

(米国、マレーシア、中国)

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