テクノロジーカンファレンス「ロンドン・テック・ウイーク」、ブラック ジャック ストラテジー
(英国)
ロンドン発
2021年09月30日
英国で9月20~24日までロンドン・テック・ウイークがオンラインで開催された。世界各国の創業者やグローバルリーダー、投資家らが集まり、社会におけるテクノロジーの役割の重要性について議論を行った。
テーマは、リーダーズ&イノベーション、投資、知識とスキル、グローバルインパクト、ダイバーシティー&インクルージョン、デジタル企業の6つ。議題は、経済回復の支援と、デジタル格差や新型コロナウイルス感染拡大などの課題解決についてだった。
このイベントでは、ヒラリー・クリントン元米国国務長官がパネルディスカッションに参加し、大きな注目を集めた。同氏は女性の創業者とテクノロジーリーダーに焦点を当てた「アクセラレート・ハー(AccelerateHER)」のセッションで、職場での男女平等の実現には意識的かつ制度的な変化が必要なことを訴えた。また、自身の経験から、ジェンダーにとらわれずに努力し続けなくてはいけないとも述べた。
ヘルスケア分野のパネルでは、英国が世界有数の市場とされるヘルステックに関して、議論が交わされた。新型コロナウイルス禍で患者を感染の危険にさらさずに治療するため、医療部門が新たなデジタルヘルスケア技術を導入する必要性と緊急性が議論された。人工知能(AI)プラットフォームを利用して生産性や在宅勤務者の満足度の向上につながる環境を分析する企業もみられた。また、英国保健・ソーシャルケア省所有のゲノム関連プロジェクトを行う企業ゲノミクス・イングランド(Genomics England)のニコラ・ブラックウッド氏は、ヘルスケアシステムの変革促進の必要性を語った。手術用ロボットを提供する英国のCMRサージカル(CMR Surgical)のペル・ベガード・ネルセス氏は、自身の経験から、AIを使った手術を進めるべきで、英国ではそうした手術が既に拡大しつつあると述べた。
英国内のテック分野のリーダーや最先端の企業を選出するロンドン・テック・ウイーク・アワードでは、インスピレーショナル・リーダー・オブ・ジ・イヤーに27歳のエネ・プレシャス氏が選ばれた。彼女は、英不動産金融企業レンドインベストの製品責任者として7人のチームを管理した。さらに、キャリアイアー(CareerEar)というキャリア関連のスタートアップを立ち上げた。同社は、求職者や転職者、業界経験者、雇用者などが参加するコミュニティーを作り、新しいキャリアや働き方の機会を提供している。特に人的ネットワークや機会がない人々を積極的に支援している。
テック・フォー・インパクト・スタートアップ・オブ・ジ・イヤーでは、患者管理のデジタルヘルスケア企業ドクタードクター(DrDoctor)が選ばれた。同社は、英国有数の患者主導の予約システムを提供し、予約に係るコスト削減を実現、さらに、患者と医療従事者の関係構築を支援し、リモートケアのソリューションも提供。病院向けの製品展開を通じ、感染拡大初期の数カ月間で33万人の患者にサービスを提供するなど躍進した。
(島村英莉)
(英国)
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