連邦議会選挙は社会民主党が第1党に躍進、連立協議に向け始動
(ドイツ)
ベルリン発
2021年09月28日
ドイツ連邦議会選挙(総選挙)が9月26日に投開票された。現連立与党で中道左派の社会民主党(SPD)が第1党に躍進し、メルケル首相が率いる最大与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が第2党に転落した。各党の得票率(暫定結果)は、SPDが25.7%(前回2017年総選挙との得票比:5.2ポイント増)、CDU/CSUが24.1%(8.8ポイント減)、環境政党の緑の党(Grünen)が14.8%(6.4ポイント増)、中道リベラルの自由民主党(FDP)が11.5%(0.8ポイント増)、極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」が10.3%(2.3ポイント減)、左翼党は4.9%(4.3ポイント減)となった(添付資料表参照)。新たな連邦議会(下院)の議席数は、現在より137議席増の735議席(注1)になった。
単独で過半数を獲得した政党がないため、連立協議に対する各政党の意向が報じられている。SPDは、緑の党とFDPによる「信号機連立」(注2)を目指し、両党との協議を開始したい意向だ。メルケル政権4期のうち3期で連立を組んできたCDU/CSUとの「大連立」については、オラフ・ショルツSPD首相候補が、選挙前に「大連立の継続は望まない」と発言している。CDU/CSUは、第1党のSPDを除く、緑の党およびFDPとの「ジャマイカ連立」(注3)を模索。緑の党は、どの政党とも共通項を見いだすための話し合いをしたいとする一方で、FDPとは大連立に反対する立場を共有するが、政策面では乖離が大きい点を指摘。FDPは、緑の党と予備的協議を行うとしている。ショルツ氏およびアルミン・ラシェットCDU党首は、いずれもクリスマス前には連立相手を確定させたい考えを示した。
第二公共放送(ZDF)が9月27日に発表した有権者への調査によると、各連立の組み合わせについて「よい」と回答した割合は、「ジャマイカ連立」が33%、「大連立」が28%、「信号機連立」が28%、と、拮抗(きっこう)する結果となっている。
今回の選挙結果について、ドイツ機械工業連盟(VDMA)は9月27日、声明で「新連立政権は市場とイノベーションを重視した枠組みを設定しなければならない」と求めた。「ドイツの産業は輸出に支えられており、保護主義に反対し自由貿易を促進する方向で政治的な支えが必要。また、家族経営企業(経営者)に対する財産税や相続税の導入(注4)は、環境保護に向けた技術革新を減退させる。こうした企業に新たな負担を強いることはあってはならない」とし、人権を重視し中国に強硬な立場を取る可能性がある緑の党や、経営者への増税も示唆するSPDを牽制した。
(注1)小選挙区と比例代表による小選挙区比例代表併用制で、議席は比例の得票率で配分される。小選挙区の当選者数が比例の配分議席数を上回る分は獲得議席として確保される「超過議席」制度により、議席数は選挙のたびに増減する。
(注2)ドイツでは各政党がイメージカラーを定めている。SPDが赤、CDU/CSUは黒、緑の党は緑、FDPは黄。「信号機」はSPD(赤)、緑の党(緑)、FDP(黄)の組み合わせを表す。
(注3)「ジャマイカ」は、CDU/CSU(黒)、緑の党(緑)、FDP(黄)の組み合わせを表す。
(注4)ドイツには家族経営の中小企業が多く、現政権は家族経営企業(経営者)に対する財産税や相続税の導入、増額を見合わせてきたという経緯がある。
(ヴェンケ・リンダート)
(ドイツ)
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