米下院民主党、3兆5,000億ドル投資財源として増税案発表、法人税率26.5%に

(米国)

ニューヨーク発

2021年09月15日

米国下院民主党は9月13日、上下両院で審議中の3兆5,000億ドル規模の投資計画の財源となる増税案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。米メディアによると、増税規模は10年間で企業、個人に対してそれぞれ約1兆ドルで、その他の財源として、税の徴収強化による約1,200億ドル、薬価政策の変更による約7,000億ドル、同計画の経済押し上げ効果による税収増の約6,000億ドルを充てることにより、同計画の財源は賄えるとしている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版9月13日)。

企業に対する課税について、主な項目としては、法人税率を現行の21%から26.5%に引き上げるほか、グローバル企業の国外収益に対する課税の最低税率を現行の10.5%から約16.6%に引き上げることを盛り込んでいる。バイデン政権が当初提案していた増税後の税率は前者が28%、後者が21%だった。

個人への課税については、主な項目として、個人所得税の最高税率をバイデン政権の当初の提案どおり、現行の37%から39.6%(年収40万ドル超の場合)に引き上げることに加えて、500万ドルを超える所得についてはさらに3%の付加税率を加えることを提案している。また、株式などの譲渡益に対するキャピタルゲイン課税の最高税率を現行の20%から25%に引き上げることも盛り込んでいるが、これについては、バイデン政権の当初の提案では39.6%となっており、市場への影響を考慮したかたちとなっている。

なお、上院で提案された炭素国境調整を目的とする課税措置(特集:北米地域における環境政策の動向と現地ビジネスへの影響ブラック)については、現時点では今回の増税案には盛り込まれていない。

増税案について今週にも下院で審議・採決が行われる見込みだが、今後修正なく歳入委員会を通過するかは不透明だ。下院では民主党が220議席、共和党が212議席(欠員3議席)となっており、民主党は党内から反対する議員が4人以上出た場合は過半数を失うこととなる。民主、共和各党の勢力が拮抗(きっこう)する上院では、民主党中道派に属するジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)が今回の投資計画の規模に反対し、「1兆から1兆5,000億ドルの規模であれば、支持できるかもしれない」と述べており(政治専門誌「ポリティコ」9月12日)、予算決議()の時と同様、下院で上院の中道派の動きに賛同する議員が一定数現れた場合は、同計画の成立は危うくなる。一方で、エリザベス・ウォレン上院議員(マサチューセッツ州)やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(ニューヨーク州)など民主党内左派の議員はさらなる支出規模拡大を求めているとされ、今後党内での駆け引きが激しくなりそうだ。

(宮野慶太)

(米国)

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